積読本は積読け!!

300冊の積読本もなんのその、本や映画の感想などをつらつらと述べてみたり。

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今月の映画放送視聴予定

どうも。最近どれだけ早く寝ても毎日が眠い はろーすみすです。
冬眠の季節だからなんでしょうか。

さて、お久しぶりのこのエントリー。

04日(土)21:00 『ダイ・ハード/ラスト・デイ』(フジテレビ)
       26:20 『ハーモニー』(フジテレビ)
07日(火)21:00 『メン・イン・ブラック3』(BSプレミアム)


伊藤計劃原作の『虐殺器官』公開に伴って前作『ハーモーニー』が放送。
この他、8日にはBSプレミアム『ペイチェック 消された記憶』もアリ。伏線回収の気持ち良い作品なのでオススメです。


エミール・フォーチュン(作)&ティム・マクドナー(画)『スター・ウォーズ ギャラクティック アトラス スカイウォーカー関連の銀河マップ』

スター・ウォーズ ギャラクティック アトラス スカイウォーカー関連の銀河マップスター・ウォーズ ギャラクティック アトラス スカイウォーカー関連の銀河マップ
高貴 準三

メディアパル 2016-11-21
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★★★★☆
世界初公開! ! スター・ウォーズ銀河の数々の最新マップを収録した決定版! ! 銀河全体のマップをはじめ、銀河各地の星間チャートや映画『スター・ウォーズ エピソード1 ファントム・メナス』から『スター・ウォーズ フォースの覚醒』までの映画7作や『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』の1マップも収録!! さらに正史とされているTVシリーズ『クローン・ウォーズ』や『反乱者たち』の舞台となった星々をも含む描き下ろしの大型地図30枚以上が、見開きB3大の紙面に展開! SWサーガの登場人物紹介や年表も掲載。幅広いファン向けの最新ガイド!


 『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』公開に合わせて刊行された大型本です。スピンオフ書籍より高価なビジュアル本の方が売り上げが良くなるのは過去の実績からいっても明らかながら、本邦初公開となる情報が大量に載った設定資料集に類する本が日米英同時発売という破格の扱いを受けたことには驚きを禁じ得ません。
 というのも本書はトーハンが主導し、企画から価格、生産数までを出版社と協議の上で販売まで関わったトーハンMVPブランドなるプロジェクトのバックアップの元にリリースされており、これにより最速最高のタイミングでの邦訳版出版に漕ぎつけました。

 本作はアイソリアンの芸術家、ギャミット・コンドが銀河を旅する人々から見聞きした情報に基づき、伝説のスカイウォーカー一族にまつわる出来事を蒐集し作成した地図をキュレーターが復元したもの(そのため現時点では最も未来を描いた作品とも言えます)との設定が敷かれており、大判の絵本に1惑星につき見開き1ページが費やされ、美麗なイラストレーションに添えられた各解説、カノンにおける「SW」ユニバースの宙図に大まかな年表といった膨大な資料が収められた設定集としても大変優秀です。ナンバリングタイトルである映画本編は当然として、「アンソロジー」シリーズの『ローグ・ワン』、『クローン・ウォーズ』『反乱者たち』の両アニメシリーズばかりか『CW』の未完成エピソード群“レガシー”や小説、コミックなどのスピンオフ作品までその言及は多岐に渡り、ぱっと見のとっつきやすさに反して相当ディープでコア向けな内容です。まさに初心者から玄人までどの層も満足できる一品となっていました。

 そのフォロー範囲は凄まじく、スピンオフでは軽く挙げるだけでも小説『ロード・オブ・シス』『新たなる夜明け』『ターキン』『ジェダイの剣術を磨け!』を始め、『プリンセス・レイア』『ダース・ベイダー』『砕かれた帝国』等のコミック、未邦訳のものでは超時空ロミジュリこと『Lost Stars』、反乱者たちの副読本でザーレ・レオニスが主役の『Servants of the Empire』、マザー・タルジン&モールとシディアス配下のグリーヴァス、ドゥークーたちの死闘を描いた『Son of Dathomir』、ヴェントレスとクインラン・ヴォスにスポットを当てた『Dark Disciple』まで、殆ど現時点でのカノンの集大成といっても過言ではないでしょう。コミックのリリースを頑張っているとはいえ、なかなか思うように邦訳が進まない現状で日本語化されていないスピンオフ作品の情報を知れる機会は大変希少で貴重です。
 そもそも本銀河地図が発見されたとされるグラフ・アーカイブからして実はスピンオフネタで、『EP3』直後の時代を舞台に銀河の辺境で新種の生物や植物を発見しながら未開地域の地図作成で生計を立てる一家が帝国軍に目を付けられ、連行されてしまった両親を取り戻すため幼い姉弟が宇宙を旅をするジュニアノベル「Adventures in Wild Space」の主人公たちの苗字がグラフなのです。
 つまり、序文で述べられるアーカイブの星オーカス2の銀河の古今東西様々な美術品、歴史書、珍しい動植物を集めたとされる一大博物館グラフ・アーカイブの設立者こそが成長したこのグラフ姉弟=リナとマイロであることは想像に難くなく、子供の頃に大冒険を繰り広げた彼らがやがて銀河の記録を保存する任を担うようになるとは。ロマンを感じます。
 さらにはこの『ギャラクティック アトラス』、書かれている文章や出来事が必ずしもすべて正確とは言えないし、冒険者が広めたホラ話もあると書かれているのもポイントでしょう。これはレジェンズの『クロノロジー』でも用いられた手法で、メタ的には今後さらなる作品が生み出される過程で現行の設定に改変が加えられ、矛盾が出る場合もあることへの方便ながら、同様の解釈で既存のレジェンズタイムライン上にある各作品を“数千年後の銀河に伝わる嘘か真かわからない伝承”としてカノンに組み込み、インユニバース化することも可能となったわけです。
 一部ファンの間で囁かれるレジェンズとカノンの関係は史実と歴史小説のようなものであり、三国志と三国志演義の関係に似ているとの解釈を実際に現実化する下地ができたのです。やりようによっては今後、レジェンズ時系列の新作をカノンのインユニバース作品として刊行できる言い訳が立ったわけで。長年のスピンオフファンにとってこれは嬉しいですよ。

 ヤヴィンの戦いを基準年にしたBBY、ABY歴もカノンでは今作が初の言及です。旧レジェンズ時代は『CW』の登場でしっちゃかめっちゃかになり結局最後まで混乱を来したクローン大戦期の時系列が大まかに整理されているのも有難く、掲載された年表に従えば劇場版とS1が22BBY、S2-S3が21BBY、S4-S5前半が20BBYの出来事で、S5のマンダロア事変とサティーン公爵殺害あたりからS6こと「ロスト・ミッション」は19BBYになるようです。
 こうして見ると20BBYがほぼすっからかん状態で『暗黒の会合』や『Medstar』の存在がタイムラインの同定を難しくしていたレジェンズ時系列に比べ、上手い具合にバラけている印象ですね。
 巻頭に載っている宙図にしても旧来のスピンオフファンに馴染みの惑星がとことん削除されカノン初出の星がいくつも追加されているため、旧レジェンズ時代と座標こそさほど変わらないとはいえ随分と違ったものに感じます。レジェンズとカノンが仕切られた際、「スター・ウォーズ」の世界観がここまで刷新されるとは思いませんでした。もはやカノンとレジェンズは完全なる別物と捉えた方が良さそうです。

 高さ38cmの超大判に装丁も豪華本に相応しい高級感あるデザインで圧倒的な存在感を誇り、それがまた歴史を紐解くワクワクをそのまま体現しているようで非常に満足度の高い一冊ではありますが、強いて苦言を申せばやはり他書籍との間の訳語の不統一と誤字誤植が気になりました。
 訳語の問題はディズニー体制移行後の書籍最大の難点で、いままでのように「SW」に通じた編集が元締めとなるわけでなく、横の繋がりもないまま自由気ままに好き勝手訳した結果、同一のキャラクターでも媒体によって日本語表記がまったく異なっているのが現状です(D社曰く、小説の訳出くらい誰でもできるという姿勢らしい)。
 特に今回は長らく「SW」スピンオフに携わってきた高貴準三氏が監修していることもあり「NJO」世代の自分としてはかなり期待していたのですけれど、蓋を開けてみればケイナンの本名ケイレブ・デュームがカレブ・ダム、映画HPでチアルート・イムウェと紹介されているにチェリット・イムウェイetc――。極めつけはジェダの頁でホイルスがウィルズと書かれている始末。確かに、『ローグ・ワン』ではウィルズとなっています。これからウィルズと呼んでいく方向性なのかもしれません。しかし、キャラクターの名前すら字幕表記に沿っていないのに、よりにもよってファンの間で思い入れの深い最重要単語であるホイルスをウィルズと書くのは甚だ納得でき兼ねます。だって、ずっとホイルスでやってきたじゃんよ……。
 「SW」に関してはカノン移行前もDVDなり吹き替えなりの公式訳があまり信頼できなかったため、そういう意味では何も変わっていないとも言えますが、あるキャラやある単語について語らうとき、正式な名称が統一されないままでいるのはこの上なく不便であり、仮にも「SW」という大規模コンテンツを扱っている立場としては不親切かつ不誠実だと感じるのは言い過ぎでしょうか。

 ともあれ、3千円弱の値段に恥じない内容であることは間違いありません。Amazonでは既にコレクター価格になっていますし、企画の経緯から考えてもそこまで部数が刷られているとは思えないので、確保はお早めに。値段以上の価値はあります。「SW」ファンはマストバイです。


青山文平『半席』

半席半席
青山 文平

新潮社 2016-05-20
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★★★☆☆
若き徒目付の片岡直人に振られたのは、腑に落ちぬ事件にひそむ「真の動機」を探り当てることだった。精勤していた老年の侍がなぜ刃傷沙汰を起こしたのか。歴とした家筋の侍が堪えきれなかった積年の思いとは。語るに語れぬ胸奥の鬱屈を直人が見抜くとき、男たちの「人生始末」が鮮明に照らし出される。


 父の代には叶わなかった永々御目見の旗本となるため日々ひたすらに職務に励む徒目付が、金も出世も興味なし昼行燈のような上役からごくごくたまに割り振られる“頼まれ御用”を通して、人々の生き様とそれぞれの裡に秘められた想いに触れていく時代小説。
 完全ジャンル外の作家による非ミステリの時代小説ながら『2017本格ミステリ・ベスト10』において第14位を獲得し、一際異彩を放っていたのが気になって読んでみました。
 あらすじからわかるように突如として人が変わってしまったかのような行動をとった者たちの「何故」にスポットを当てた作品で、ミステリとしてはホワイダニットに特化した連作集です。親交の深い人間に突然斬りかかり、捕えられた人々――そんな犯人たちが刃傷沙汰を起こしてなお「他人に話すほどのものじゃない」「大したことなくしょうもない」と黙して語らず、墓場まで持っていくと決めた動機が明らかになることで、隠されていた心の叫びが吐露されます。

 他人様に危害を加えるには普通相応の理由があるハズで、見ず知らずの他人ですらない友人知人に刀傷を負わせておいて「しょうもない」も何もないだろう、とも感じるのですが、実際答えを聞くとストンと腑に落ちる。確かに「しょうもない」のです。しかしながらそれと同時に片岡によって解き明かされる真実は十分以上に得心のいくものであり、およそイコールで結ばれるとは思えない「しょうもない動機」と「大怪我させるだけの理由」が確かに両立するから驚きです。
 悪いのは自分であり、ただの八つ当たりであるかもしれない。それでも凶行に及ばずにはいられなかった。一見して相容れない動機に対するこのふたつの視点が同居していることが、物語にいっそうの悲哀を浮かび上がらせるのです。
 効かせた伏線が結末のやるせなささえ生む「真桑瓜」、ある人の楽しみが別の人間を苦悩に落とす「蓼を喰う」。人情と嫉妬と愛憎に塗れた人臭い事件はどこまでも悲劇的で、止めることができないからこそせめて本当の気持ちを受け止めたい。

 そうはいっても本格ミステリの文脈で書かれた小説ではないため収録作中ミステリ色が濃いのは前4本に限られ、多少ムリくりな真相だったり、比較的見当のつきやすい話もありました。どちらかというとあまり広くアンテナを張らない傾向にある本ミス投票者がまったく別ジャンルの非ミステリ作家による時代小説にこぞって入れるほど強烈な訴求力を持つ作品であったかというと、そこまででもないと思います。


アラン・ディーン・フォスター『スター・ウォーズ フォースの覚醒』

スター・ウォーズ フォースの覚醒 (講談社文庫)スター・ウォーズ フォースの覚醒 (講談社文庫)
アラン・ディー・フォスター J.J・エイブラムス

講談社 2016-09-15
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★★☆☆☆
「エンドアの戦い」から約30年の月日が流れ、銀河の平和は帝国の復活を企む「ファースト・オーダー」によって再び脅かされていた。「レジスタンス」のリーダー、レイア・オーガナ将軍は、行方不明の兄、ルーク・スカイウォーカーの居場所を示した地図を手に入れるべく、使者を惑星ジャクーに放つ。使者からドロイドのBB‐8に託された地図を手に入れたのは、廃品回収を営む孤独な女性レイと、ファースト・オーダーからの脱走兵フィンだった。彼らの行く手にダース・ベイダーの崇拝者、カイロ・レンが立ちはだかる。それは、新たなる覚醒のはじまりだった――。


「スター・ウォーズ」ノベライズ 第7作。
 2005年の新三部作完結から10年、ディズニーによるルーカスフィルム買収で再び動き出すこととなった「スター・ウォーズ」シリーズのナンバリングタイトル『スター・ウォーズ フォースの覚醒』こと『EP7』の公式ノベライズです。映画の公開は一昨年末でしたが、およそ半年以上後になってようやく邦訳版が刊行されるスケジュールはいまになって読み始めた自分が言えた義理ではないとはいえ、もう少しどうにかならなかったのかと。なるべく情報を秘した状態で映画を観てほしいという思惑から本国では封切りと同時に電子版が配信開始、その後1月ほど遅れて物理書籍が販売されたため、そこから翻訳作業に取り組まざるを得なかった事情は重々理解できますが、日本で出た頃にはとっくに公開終了しているじゃんよ。完全に売り時を逃しています。
 ただでさえ日本はSW後進国でスピンオフが売れないのだから、もう少し考えてほしいものです。ましてやファンはできる限り、データを集めた上で万全の態勢で本編に臨みたいわけですからね。そのあたりの融通の利かなさは本当に殿様商売だなー。
 その癖、ロア・サン・テッカを無駄にロー・サン・テッカ表記にするカノン安定の俺訳語。そこはパンフレットどおりで良かったろうに、どうしてそういう余計なことをするかねぇ。

 本書を手掛けたのがアラン・ディーン・フォスターなのもいやらしいです。アラン・ディーン・フォスターといえば『EP4』公開時に刊行されたノベライズをルーカス名義でゴーストライターの役を担った人物としても有名で、『EP5』が制作される前に書かれた後日談小説でありいわば最初の「スター・ウォーズ」スピンオフともいえる『侵略の惑星』の著者でもあります。
 旧三部作から30年ぶりの直接の続編(新三部作は過去編なので)である新たなサーガを、原典に立ち返ってもう一度同じ作者で!といういかにもな話題性を重視した懐古主義的発想は『EP7』本編、ひいては過去のコンセプトアートを流用しまくるディズニー政権下における新カノンに通ずる媚びを感じます。
 事実、アラン・ディーン・フォスターの手による『侵略の惑星』や『崩壊の序曲』はファンの間でそれほど高く評価されているわけでなく、本書においても劇場で初見時に鮮烈な印象を与えたカイロ・レンの空中ブラスター止めやファルコンチェイスといった諸々のシーンがひたすら淡々とあっさり処理されていてまったく良さが伝わりません。
 また、映画にはなかった場面としてポー生還の経緯とカットシーンに存在するアンカー・プラットがタコダナまで乗り込んでくるくだりが補完されているものの、こちらも大した分量でないためこのためだけに読むほどではありませんでした。

 読者の知識がしばしば本文の記述を上回ってしまうのも問題です。『フォースの覚醒前夜』で明かされたタコダナ戦でフィンと対決し「Traitor(裏切者)!」のセリフで人気をかっさらったトンファー持ちのトルーパー、FN-2199“ナインズ”とフィンの因縁や赤いマスクのキャプテン・イサノが被っているはグリーヴァス将軍の種族カリーシュのものであるとか、マズ・カナタの城に『クローン・ウォーズ』のホンドー・オナカーの海賊団やマンダロリアン、『反乱者たち』ヴィザーゴ・シンジケートの旗印が掛かっているだとか、ファンには知られた細かなネタを総スルーしているのです。
 そんなマニアックなことはどうでも良いと思う人もいるでしょう。しかし、そうした細かな繋がりこそが世界観を拡げ、面白味を生むのです。こちらの知らない情報をバンバン突きつけ圧倒してこその「スター・ウォーズ」小説。本書ではそれが抜け落ちてしまっています。

 今回、最大のサプライズは序文でホイルス銀河史がカノン入りを果たしたことでしょう。「スター・ウォーズ」の物語はホイルス銀河史に記されたものだという設定は『EP4』ノベライズで触れられており、レジェンズでは旧三部作の100年近く後、R2-D2がスカイウォーカー家の物語をホイルスのシャーマンに伝えたと言われています。われわれの親しんだ物語はすべてこのホイルス銀河史によって語られたとされているのですが、一方でこの“ホイルス”とは何のことなのかは未だ謎とされ、ちょっとやそっとで踏み込めない領域でもありました。
 これらは『ローグ・ワン』にてチアルートとベイズは巡礼の星ジュダのホイルス(ウィルズ)の元守護者という来歴で映像作品に本格的に取り入られるわけですが、本作での記述はその先駆けであり、今後の「SW」の方向性を大きく示唆するものかもしれません。
 映画ではいまいちその因縁が伝わり難かったカイロ・レンとレイの関係も、本書を読む限り過去に何がしかの接点があったようにも思わされ、こちらも今年末公開の『EP8』、さらには『EP9』の展開を占う描写となりそうです。
 とまぁ、不満ばかりが多くなってしまいました。出せ出せとさんざん述べてきて申し訳ないですが、小説としては退屈な出来だったので、ノベライズそのものに余程興味があるのでなければ素直に映画本編を観ることをお勧めします。


*CommentList

高殿円『シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱』

シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱 (ハヤカワ文庫JA)シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱 (ハヤカワ文庫JA)
高殿 円

早川書房 2016-12-20
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★★★☆☆
やっぱり、シャーリーは詩人だよ
2012年、オリンピック開催に沸くロンドン。怪我で除隊して以来、次の就職先が見つからない女医ジョー・ワトソンに、ベイカー街221bでのフラットシェアの話が舞い込む。だが、シェア相手が特別だった。同居人――シャーリー・ホームズは、頭脳と電脳を駆使して英国の危機に立ち向かう、世界唯一の顧問探偵だというのだ。ある日、女刑事グロリア・レストレードが訪ねてくる。遺体がピンク色に染まる中毒死が頻発しているらしい。いまだ無職のジョーはシャーリーに連れられて調査に赴く。それは、二人がコンビを組む、初めての事件だった。


 コナン・ドイルによる「シャーロック・ホームズ」の物語の登場人物の性別を女性に置き換えて、舞台を現代へと移したパスティーシュ作品です。人形のように美しくも感情表現に乏しく、ロンドンの治安維持システムを自称する僕っ娘シャーリー・ホームズと、アフガン帰りの元軍医にしてティーン向けハーレクインを書いていた過去を持つジョー・ワトソンのコンビが活躍する表題作とふたりの友情を描いたボーナストラック「シャーリー・ホームズとディオゲネスクラブ」の2篇が収録されています。
 胸に持病を抱え、移植に際して最新鋭のコンピューターシステムを搭載した人工心臓を埋め込んだ半電脳探偵、それらを遠隔管理するAIのミセス・ハドソンといった半ばSFじみたぶっ飛んだ設定は「ホームズ」愛好家には賛否割れそうなところですが、それだけに各人の性格付けは抜群です。雪広うたこによる美麗なイラストも相俟って原典とは別個の独立したキャラクターとして十分以上の魅力を放っています。

 とはいえ事件の方はオリジナルに極めて忠実で、一酸化炭素中毒と見られる4人の女性の連続死の最後の現場に残された“RACHE(復讐)”の文字は『緋色の研究』のシチュエーションと同一です。他にも『四つの署名』を思わせるテムズ河でのチェイスあり、正典にもあるあれやこれやな事件を匂わせる記述あり、黒幕にお馴染みのアノ人が出てきたりと大きくいじっているようで意外や意外にそのままです。
 むしろ一見キャラクター至上主義的なキャッチーな性別改変が作品ひいては事件の真相において大きな意味を持っており、『緋色の研究』を『緋色の憂鬱』に再解釈するにあたって女性ならではの視点が光ります。作者が違えば下品ともとられかねないネタをトリックに落とし込み、寂しく物悲しい物語へと仕上げているのはひとえに耽美ささえ感じさせる華美で煌びやかな装丁と、
設定の勝利といえるでしょう。
 作品の性質上、あまり他人には薦め難い作品ではありますがぜひとも続きを出して頂きたい。シャーリーとジョーのそれからが純粋に気になります。


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プロフィール

はろーすみす

Author:はろーすみす
シリーズものも平気で数年寝かせる積読家。本格ミステリとスター・ウォーズ小説を中心に読み漁り、新刊・話題作はあまり追っていません。

好きなミステリ作家は古野まほろ、はやみねかおる、西尾維新、霧舎巧。
ジャンル外では築山桂と小川一水。
講談社ノベルスをこよなく愛す特ヲタ。

当ブログはリンクフリーです。
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2014年のベスト5

2014年に読んだ小説の       (暫定)ベスト5はこれ!!

2012年のベスト5

2012年に読んだ小説の        ベスト5はこれ!!

2011年のベスト5

2011年に読んだ小説の          ベスト5はこれ!!

1.トリプルプレイ助悪郎(2007年刊)   2.名探偵に薔薇を(1998年刊)             3.化物語(2006年刊)          4.時砂の王(2007年刊)                  5.天帝の愛でたまう孤島(2007年)

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