2012.03/24 [Sat]
映画『ウルトラマンサーガ』
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★★★★☆
かつて人類が栄華を極めた星、地球。だが、その星からは人々が姿を消してしまった。突如出現した怪獣たちの雄叫びが、無人と化した都市に虚しく響く。だが、そんな地球にもわずかに残された者たちがいた。それは、未来への最後の希望となる子どもたちと、子どもたちの未来のために戦いへと身を投じた7人の女性“チームU”のメンバー。彼女たちが、子ども守って必死に戦っているところへ、ウルトラマンダイナ=アスカ・シンが時空を超えて現れる。それが、彼女たちが初めて出会ったウルトラマンの姿だった。怪獣たちを操り、攻撃を仕掛けてくるバット星人。さらに他の空間から、ウルトランマンコスモスとウルトラマンゼロもこの地球にやってくる。しかし既に、最強兵器であるハイパーゼットンが覚醒のときを迎えようとしていた。 (2012年 日本)
「ウルトラマンゼロ」シリーズ 第3作。
本日公開の映画『ウルトラマンサーガ』を2Dで観てきました。決して都会ではないし3D鑑賞でもないし、私が行った劇場では明日舞台挨拶があるらしいので仕方ないのかもしれませんが、お客さんの入りは劇場の1/5ほど。休日で初日なのにこの少なさは円谷を応援している身としては若干の危機感を覚えます。
ただ、肝心の出来は良かったです。やはり子供向け映画の90分という尺の短さがネックになってコスモスが並行世界にやって来た経緯など説明不足な面もありましたが、それらもまぁ脳内で補完できるレベルなのでさほど問題はなし。
何よりも良かったのは、ウルトラマンの力を拒むタイガとチームUのリーダー・アンナのふたりを主人公にした人間ドラマに比重を置いていたこと。予告段階ではかなり不安だったDAIGOの演技も、凄腕チャラ男でその実ヘタレなキャラクターには結果的に合っていたと思うし、AKB48の面々の背伸びしない素っぽさがチームUの結成秘話を知ったと同時にすごく得心のいくものに変わってくる。実際、チームUが地球防衛隊としての決心を固めた場面ではじんわりと目がジューシーになってしまったくらいです。
そして何と言ってもアンナ役の秋元才加の存在感。まさしく隊長といった風格で、これ以上ないハマり役でした。
ウルトラシリーズの命運が掛かっていると言って良い今回の劇場版は、とにかく集客を課題としたキャスティングで、主演DAIGO、地球防衛隊チームUのメンバーにAKB48、ゼロと共にメインを張るウルトラマンにダイナ=つるの剛士とコスモス=杉浦太陽といった平成世代出世組、極めつけはバット星人の声に東国原元宮崎県知事を起用する徹底ぶりでしたが、キャスト面でいえば完全に成功。DAIGOとAKB48だったからこそできた『ウルトラマンサーガ』だと言って良いでしょう。
そして本来ならば不可能だったハズのゼロ、ダイナ、コスモスの世界観が異なる3ウルトラマンを共演させることを可能としたのが『ULTRASEVEN X』~『ウルトラギャラクシー』で語られてきた並行世界の存在と、前作『ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国』で本格的に確立されたマルチバースの設定です。つまり現在のウルトラシリーズの中には『ウルトラマンダイナ』や『ウルトラマンガイア』、『ウルトラマンコスモス』といった設定も世界観もウルトラマンの出自もまったく異なる諸作品を、パラレルワールドの名の下に内包してひとつの世界を構築しているのです。
そのため、『コスモス』や『ダイナ』のエピローグが描かれているという点もファンには注目のポイントです。アヤノと結婚して息子を授かり、怪獣と人間の共存するジュランで暮らしていたというムサシのエピソードはとうとうそこまで辿り着いたのかとテレビシリーズを見ていた人間にはとても感慨深い。しかもそればかりかカオスヘッダーもジュランで暮らしているとか、既にこの段階で感動の嵐ですよね。
一方、タイガがスーパーGUTSの新人隊員なこともあって『ダイナ』成分もかなり濃い。15年経ったスーパーGUTSの面々やアスカがいまや教科書に載っている伝説の英雄として扱われているなど、こちらもファンであれば身悶えするような後日談が描かれています。アスカとリョウたちとの“再会”も最終回を壊さない形の結末で素晴らしかった。
アスカの年齢を重ねて生まれた風格もそうですが、個人的にはムサシの優しい物腰に見え隠れする確固とした貫禄に痺れました。もはや悟りの境地かというくらいです。
だからこそ余計にタイガの未熟さが伝わってきて、そこがまた良いんですよね。
今回の舞台となる地球は既にバット星人に侵略された世界です。ハイパーゼットンの実験場として選ばれた地球に残されたのは、わずか数名の子供たちと地球防衛隊チームUのメンバーのみ。このまま黙っていつか自分たちも消されるしかないのか、というところに現れたのがダイナになるわけですが、皆の心の支えとなっていたアスカもまた、戦いの中で姿を消してしまう。
一見コミカルで覆っていますが、本作の設定は相当にヘビーです。中盤のハイパーゼットン覚醒からの→みんなの家が無残にも破壊されていく描写はむごいものがあり、ナンナの悲痛な叫びとその手に握られたぬいぐるみ、子供の描いた絵が燃やされていくあたりはかなりくるものがありました。
しかしだからといってずっとシリアスなのかというとそうでもなくて、ゼロとタイガの漫才ちっくなやりとりを含め、つとめて明るい作風になるように配慮されています。チビトラマンゼロが子供たちにつつかれるくだりとにんじんには笑いました。グビラとのやりとりも楽しそうで。
特撮に関してはメイキングを観てから行ったせいか、あの狭いミニチュアスタジオにCGでここまで奥行きを付けられるものかと驚きました。ビルの上に立つゼロや実景をバックに空中戦を繰り広げるゼロも『ULTRAMAN』以来、久々に良い空中戦を見たという感じです。
また、冒頭シーンでのダイナの巨大感は圧倒で、アンナ視点で見るとまさしく巨人という言葉が相応しい。ただし気になったのは実景合成のリアルさとミニチュアのいかにもミニチュアらしい質感のそぐわなさです。ミニチュア特撮が悪いとは1ミリも思いませんが、リアリティ的な面で考えるとどうしても実景に目を奪われてしまうのも事実です。
サーガVSハイパーゼットンは従来のウルトラとはまったく異なった超然とした戦闘スタイルでこれまた満足。ハイパーゼットンとサーガ、両者共に超然としているが故に互角。そしてそこで逆転の一手を打つのが他でもない人間である、と。たぶんこれも昔だったら「ウルトラマン頑張れー」で終わってしまったと思うんですよ。でもそうじゃない。ウルトラマンの闘いをただ見ているだけではなくて、私たち人間にも何かできることがあるハズだ、とアンナは言うわけですよ。
能力的に拮抗している相手だからこそ、人間の力を足してゼットンを上回る。「人間がウルトラマンを引っ張って勝利に導く」という製作陣のメッセージ、確と受け取りました。
――と、まぁウルトラファンとして語りたいことも多く長々と書いてしまいましたが、とにかくこの『ウルトラマンサーガ』、オススメなのでぜひぜひ観に行ってみてください。「ウルトラマン」をあまり知らない人ほど、その内容にびっくりすると思います。人間やるじゃん、と言いたくなること請け合いな映画です。
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