2012.03/17 [Sat]
山口芳宏『豪華客船エリス号の大冒険』
![]() | 豪華客船エリス号の大冒険 (創元推理文庫) 山口 芳宏 東京創元社 2012-02-11 売り上げランキング : 218173 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
★★★☆☆
ぼくが事件に情熱的に接するのは、ぼくが探偵だからです。
自分を探偵だと思っていて、探偵は事件を解決するための存在だと考えているからです。
荒城の事務所を一人の男が訪ねてきた。戦前、欧州からの引き揚げ船で見た並走する船の消失事件。その船上にあった美女の像の謎。それらを解明してほしい――。だが男は豪華客船への招待状を残して殺害されてしまう。船へ乗り込んだ荒城と殿島を待ち受ける密室殺人と伝説の犯罪者からのメッセージ。探偵たちは解き明かせるか?
「大冒険」シリーズ 第2作。
真野原(孫)の「島」シリーズよりも、真野原(祖父)の「大冒険」シリーズの方が好みですね。この決してリアルではない作られたレトロ感が、二大探偵による冒険探偵小説的な作風と見事にマッチしています。今作ではついに、山口作品全体を通じての最重要人物となる稀代の大犯罪者・夜叉姫がお披露目です。
いかにも怪人二十面相ちっくな強敵でもあり、古野まほろ作品の狐のようなラスボスでもある夜叉姫が、独自の犯罪美学に則って跳梁する様が本作最大の特徴で、ホワイダニットの面でかなり遠大なものを見せてくれます。
一方でインパクトある真相で毎度読者を驚かせてくれる山口ミステリにしては、謎解きに関してやや大人しめな印象もあります。そのぶん真野原と荒城(と殿島)が存分に暴れ回っているため、小説としては大人しいどころか相当にダイナミックではあるのですが、なにぶんミステリよりも冒険活劇の方に重心が傾きすぎているきらいがありました。
殿島が段々とヘイスティングズ化していっているのには笑います。それでいて何気にモテているのに気付かないという鈍感属性も搭載済み。今後、殿島が惚れる→なんだかんだで恋実らず、の流れが定着していきそうな予感がします。
『謎ディナ』以降のミステリ人気の波に乗ってか乗らずか、綾辻行人、米澤穂信とミステリ作家の小説が次々とアニメ化されていく中、次にやるべきはこの山口芳宏だと思うんだ。キャラ立ちまくりでどきどきわくわく。本当に面白いです。
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