2012.03/03 [Sat]
藤野恵美『お嬢様探偵ありすと少年執事ゆきとの事件簿』
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★★★☆☆
言っておくけれど、わたしはこれまで、だれひとり、クビになんてしていないわ。
ただ、だれもがわたしのもとからはなれていくだけ。
ぼくは、夜野ゆきと。11歳。同い年の二ノ宮家当主・ありす様に仕える執事見習いです。ぼくがお屋敷に来てから、お嬢様はお部屋にこもって、ずっと書類をごらんになっているのですが、それはどうやらお嬢様の「お仕事」に関わるようで……。5年前の宝石盗難事件と、ご友人に届いた脅迫状、婚約パーティーでおこった事件。二ノ宮ありすお嬢様が、まとめて解決いたします!
「お嬢様探偵ありすと少年執事ゆきとの事件簿」第1作。
青い鳥文庫でシリーズ刊行中のお嬢様で小学生な女の子が難事件に挑む児童向けミステリです。
収録されているのはありすお嬢様のお披露目篇である「桜の下の怪事件」と、メインとなる「「プリンセス・サクラ」事件」の2本。事件のシチュエーションやトリック、真相そのものにはさほど真新しさが見られないとはいえ、伏線の張り方がとにかく上手く、子供向けでありながら紛れもなく本格ミステリでした。
小学生はちょっとこれ、全部は拾い切れないんじゃなかろうかというくらいの量の伏線を、ごくごく自然にさり気なく忍ばせてくるのです。
「桜の下の怪事件」もよくよく考えてみると明らかに不自然な点があったにも関わらず、あまりにも違和感なく描写されているため、私自身ありすに指摘されまでまったくそこに気付かなかったという体たらく。児童書だからといって侮ってはいけません。
また、自分が探偵として真実を白日の下に晒すことで苦しまなくて良い人間に辛い想いをさせることになると気に病むありすと、両親を事故で喪い小学生でありながら執事として生きるしかなかったゆきとという主役ふたりに影があるところも魅力のひとつでしょう。心に孤独を抱えつつも共に歩むことになったふたりの変化と併せて、以後の展開に期待したいシリーズです。
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