2009.07/07 [Tue]
映画『真夏のオリオン』
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★★★★☆
オリオンよ、愛する人を導け――
第二次世界大戦末期、沖縄南東海域。日本海軍は、なんとか米軍の本土上陸を食い止めよう最後の潜水艦隊を配置する。その中の一艇「イ-77」の艦長・倉本は、出航前日に恋人の志津子から『真夏のオリオン』と題された楽譜を手渡されていた。そしてこの楽譜は、60年以上もの間、アメリカ軍の艦長が大切に保管されることに。なぜ敵軍の手に渡ったのか――。 (2009年 日本)
観てきましたよ、『真夏のオリオン』!
リアリティよりエンターテイメント性に重きを置いた、と侮ることなかれ。その実、描かれているのは、人の心と命の尊さ、戦争の相手も“同じ”人間であるということ。素晴らしい映画でした。
空から見下ろす米戦艦の映像が多少チープに見えたのと、北川景子が無駄に一人二役だったこと(そこは別人で良くない?)が微妙に気になりましたが、それでもいままで見た邦画の中では上の方じゃないかと。
まずこの映画、ジャンルとしては戦争映画なのですが、派手なシーンはほとんどありません。BGMも抑え目で、始終静かに物語は進みます。
どぎゃんっ、ばこーんという爆発過多、戦闘シーンに手に汗握りたいという人向けの作品ではないです。勿論、後半の知略を尽くした心理戦も大きな見所ではありますが、それでさえ静かに進む。そう、本当に静かな作品です。これが、潜れば周りが無音に近い“潜水艦”を取り巻く海中の静けさと、イ-77の乗員の心情に重なるわけです。
この『真夏のオリオン』、他の戦争映画と一線を画すのがこの心情部分なんです。玉木宏演じる倉本艦長らは、この戦争で日本が負けることをわかっているんですね。それは変えられない事実。むしろ敗戦することで少しでも犠牲になる命が減るのなら、早めに“終わらせる”必要が、使命があるといいます。
なので、イ-77の乗員は敵艦を魚雷で沈めても、安堵こそすれ、歓声を上げる者、喜ぶ者などひとりもいません。相手の艦を沈めるということは、無駄な命を散らすことだから。
そんなわけだから、艦長は人が乗り込む特攻魚雷『回天』の使用を主張する“操縦士”に余裕の笑顔で“勿体無い”といい、窮地の状況でも飯にしようという。食事とはすなわち“生きている”ということ。“国のために死ぬ”とか、死んだらそれでお終いで、我々は“生きる”ために戦っているのだと。
そういう考え方を持った日本海軍のとある潜水艦と、それに対峙する一米戦艦の物語です。
さて、タイトルでもある『真夏のオリオン』
お互い撃ち合い、殺し合うのが戦争。しかし、それは相手の内面を知らないからできることでもあります。自分と同じように誰かを愛し、考える――そんな相手の心に触れたとき、自分と同じ“人間”が殺し合いの相手だと知ったとき、人は本当に、それまでと同じように非情な手段に訴えられるのか?そのキーとなるのが『真夏のオリオン』という楽曲なんですね。
ラスト、米艦からイ-77へと向けられたメッセージ、不覚にもじんわりしてしまいました。
現在公開中なので、未見の方は是非に。
オススメです。
『真夏のオリオン』 公式HP
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