2012.02/17 [Fri]
米澤穂信『儚い羊たちの祝宴』
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★★★★☆
ということは、夏さん。夏さんが自然に馴染むことが出来て、
最上級の雌のアミルスタン羊が集まるような狩り場があれば、それほどの時間はかかりませんね
夢想家のお嬢様たちが集う読書サークル「バベルの会」。夏合宿の二日前、会員の丹山吹子の屋敷で惨劇が起こる。翌年も翌々年も同日に吹子の近親者が殺害され、四年目にはさらに凄惨な事件が。優雅な「バベルの会」をめぐる邪悪な五つの事件。甘美なまでの語り口が、ともすれば暗い微笑を誘い、最後に明かされる残酷なまでの真実が、脳髄を冷たく痺れさせる。
米澤穂信は一般的に青春ミステリの書き手として認知されていますが、基本的に後味の悪い苦々しい結末が多く、読書をしてハッピーな気持ちを味わいたい自分としては、ちょっと苦手な作風の作家さんだったりします。
本作『儚い羊たちの祝宴』はまさに米澤穂信のそんなところが凝縮抽出された一作で、「バベルの会」のお嬢様方とその使用人たちが無垢な狂気と残酷なまでの無邪気さをもって紡ぐフィニッシング・ストロークに特化した連作寓話短編集です。
収録作の中では「身内に不幸がありまして」と「玉野五十鈴の誉れ」が文句なしに二強でしょう。“最後の一撃”としては「玉野五十鈴の誉れ」の方が読み手に対して強烈なインパクトを与えますが、個人的にベストだったのは「身内に不幸がありまして」です。
最後の最後で明かされる殺人の動機とサブタイトルの意味が、正真正銘ラスト1行ですとん、と得心のいくように作られており、そのあまりの巧さ、構成の美しさに溜め息が出るほどでした。さすがは『2008年本格短編ベスト・セレクション』に選ばれただけのことはある。
500円というワンコインでこのクオリティの作品が読めるなんて。間違いなく買いです。
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