2012.02/12 [Sun]
アニメ総評:『スイートプリキュア♪』
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★★★★☆
もしもこの世界が哀しみのずんどこに突き落とされても大丈夫ニャ。
だってそうなったら、きっとセイレーンはハミィと一緒に泣いてくれるニャ。
だから全然大丈夫ニャ。天然ボケでごめんニャ。何があっても、ハミィとセイレーンは友達ニャ!
ずっと、ずーっと 友達ニャ!!
音楽が溢れる町、加音町。この町で育った北条響と南野奏は小さい頃からいつも一緒だった幼なじみ。けれど、中学生になってからは何故か顔を合わせればケンカばかり……。そんな二人のもとに、音楽の国「メイジャーランド」からやってきた妖精《ハミィ》が現れた! ハミィは、伝説の楽譜に書かれている《幸福のメロディ》を《不幸のメロディ》に変えようと企む悪の王《メフィスト》から世界を守るため、二人にプリキュアに変身して欲しいと頼む。いつもは全く意見が合わない響と奏だが、二人の正義の心が一つになったとき、プリキュアに変身する! 全48話。
「プリキュア」シリーズ 第8作。
およそ1年ぶりの「アニメ総評」カテゴリ記事です。何年か前にごく自然的に脱オタして以来、殆どアニメは観ていませんからね。『もしドラ』とか『フラクタル』とか『とある魔術の禁書目録』とか、観たい作品はいっぱいあるのに、なぜか観始めようという気が起きてこない。何だろう、一種の無気力症候群なのかな……。
そんな中でも私が毎週欠かさずに視聴しているのが『プリキュア』と『ポケモン』なわけで。はっきり言って、昨年の『スイートプリキュア♪』には悪いところもたくさんありました。
いちばんの不満点は「プリキュア」シリーズに必須ともいえる友人や家族との関係性の掘り下げが前年に比べて圧倒的に為されていなかったことです。『ハトキャ』の場合は作劇方法がゲストを中心に据えたものだったので、自然と描かれることができたのですが、こと『スイプリ』に至ってはそういった制約がなくエピソードの自由度が高いにも関わらず、奏と響以外の友人関係の描写がとにかく薄い。和音やスイーツ姫、王子隊の面々にはもっと尺を与えて主役回を作ってあげるべきだったと思います。
メインプリキュアのふたりが脳筋でアホの子、地雷とトラウマを抱えまくっている響と、歴代プリキュア史上最も沸点の低い怒りんぼさん奏の喧嘩友達コンビが「絶対に許せない!」を連呼しまくって、そこで思考停止してしまうのも頂けません。正体不明の仮面のプリキュアを第三勢力として早い段階から登場させ、その変身者が明かされない時点で4人目のプリキュアを仲間に加えるなどといった変則的な試みも、いざ終わってみるとそこまで成功していたようには感じませんでした。
何よりも、1年間を通して奏と響がここまで成長しました!といった実感を得られなかったのは、成長劇『ハートキャッチプリキュア!』の後番組としては致命的です。
――しかし。しかし、ですよ。私はそれらの欠点以上に、この『スイートプリキュア♪』には見るべきものがあったと思うのです。
その第一はハミィの存在です。今年のプリキュアのお供をした妖精のハミィは同じ手には何度も引っ掛かるし、すぐ簡単に騙されるわ食いしん坊だわで天然というよりもおバカさんと呼んでも差支えもないほどの能天気さを見せます。
が、このひたすらに愚直なところが敵方・マイナーランドに寝返った身のかつての親友=セイレーンの心を救うんですね。不幸のメロディによって世界が絶望に満たされたって構わない、だって隣でセイレーンも泣いてくれるのなら、それは自分にとっては心強く、嬉しいことでもあるのだから――。たとえ悲しみの感情に呑まれたって、友人が一緒にいてくれれば大丈夫。世界を終わらせないために戦うのはこの手の作品では当たり前のことのハズなのに、それをひっくり返してマイナスさえもプラスにしてしまう。物事はそういった見方もできるのかと、これはちょっと衝撃でした。絶望の中で第4のプリキュアが目覚める第21話「ドックン!奇跡のプリキュア誕生ニャ!!」は『スイプリ』屈指の名エピソードです。
そして私が本作を最も評価している点は幹部やラスボスを含めた敵側、味方の双方にただのひとりも死者を出さなかったことです。「食らえ、この愛!」とか意味不明なことを言って問答無用に葬り去ったり、ブンビーさんと友情を築き始めたスコルプさんをあっさり殺してしまったり、これまでにも「プリキュア」の敵に対する扱いには首を傾げる部分がありました。そりゃあ、正義のヒーローが悪者を倒していけないわけがありません。
けれど、本当にそれで良いのか。プリキュアの正義が絶対視され、仮にも人の幸せを守るために戦っているプリキュアが憎めない敵キャラたちの命を奪ってしまうことは本当に正しいことなのか、常々疑問を抱いていました(いや、まぁ女児アニメをそこまで熱烈真剣に観ている自分も大概キモいですけど)
それがどうでしょう。皮肉にも「絶対に許さない」とことあるごとに宣言してきた彼女たちスイートプリキュアの面々が、ラスボスを諭し、わかり合い、最終的にノイズの存在を笑顔で受け入れるのです。大人たちが警戒心を剥き出しにする一方で、響たち4人が無条件にノイズの生還を喜ぶシーンはとても印象的です。
これぞ、プリキュアが本来あるべき理想の形でしょう。それを見せてくれただけで、私の中の『スイプリ』評価はうなぎ上りです。
――べ、別にキュアミューズのキュートさに籠絡されたからじゃないんだからねっ!
人と人が繋がって紡がれる音楽。良いも悪いもすべてひっ包めて、それでも大切な人と歩んでいけるのなら怖いものはきっとない。組曲のプリキュア、シリーズのうちでも特にお気に入りの1作になりました。くどまゆ演ずるフェアリートーンたちも、ドリーの食玩買っちゃうくらい可愛かったしね!
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