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山口芳宏『学園島の殺人』

学園島の殺人 (講談社ノベルス)学園島の殺人 (講談社ノベルス)
山口 芳宏

講談社 2010-02-05
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★★★☆☆
森崎君はね、なんときょうの朝、東の海から泳いでこの島にやって来たそうだ。
みんな、先導者の伝説は知ってるな? 彼はもしかしたら、ぼくたちの救世主かもしれんぞ。

島の秘密を探ろうとする者は、黒いサンタクロースに殺される――全寮制の学園の島を襲ったのは、生首の入った袋を背負って夜な夜な徘徊する謎の男だった! 島に伝わる『再生の書』、来日する王女が持つ『浄化の鍵』、魔界から来たという謎の無人列車、陰謀渦巻く廃墟地帯、そして次々と起きる首切り殺人――学園を救うため、学生探偵・真野原が島の謎に挑む。


「『島』シリーズ」第2作。
 「『大冒険』シリーズ」に登場する学ラン探偵・真野原の孫を探偵役にしたシリーズの2作目です。
……いや、これさぁ。私は別に「なかよし」に連載されている少女マンガを買うことに躊躇しないし、ライトノベルだって普通にレジに持って行ける人間だけれども、この装丁はさすがに難易度が高いですよね。なんで女の子がショーツ一枚で胸を隠して恥じらうイラストが表紙なの。確かにそういうシーンはあったけど!

 ただでさえ濃ゆいキャラクターに好き勝手やらせて珍妙奇天烈な大バカトリックを炸裂させる山口芳宏ですが、今回はとみに暴走しています。あらすじも大概なんじゃこのひと昔前のライトノベルはといった感じなのですが、展開やストーリーが尽く学園ラブコメと化している上に、作者自身が『本ミス』の「新作近況会」で“ジャギが物語の鍵を握っている”と述べていたように全篇遍く畳み掛けるような『北斗の拳』ネタの応酬が繰り広げられます。
 王女様の好みのタイプがジャギで、カイオウの間が出てきて、世紀末救世主伝説だの南斗聖拳だの「息をするのもめんどくさい」だの、とにかく北斗!北斗!! 北斗!!! まさに「北斗の文句は俺に言え!」状態で、出てくる度に笑ってしまう。『愛をとりもどせ!!』(言わずと知れた『北斗の拳』の主題歌です)のくだりなんて思わず口ずさんじゃいましたよ。私は世代ではないのですけど、父親が『北斗の拳』の大ファンだったこともあって小学生時分から相当読み込んでいました。個人的にはケンシロウよりも霞拳志郎の方が好きだったりするのですが(『北斗』キャラだとヒョウ、シャチ、アインが好きですね)

 本書はノベルス2段組で580ページの大ボリュームです。しかしその多くが王女様のハートをゲットだぜ!大作戦と島の秘密を巡る学園島冒険譚に割かれており、この謎とトリックを描くだけであれば実際には完成品の1/3の分量でも充分にいけるでしょう。純粋にミステリ要素のみを期待している人には、それ以外の部分が無駄すぎるほどに長く、それでいて大作と呼べるだけの衝撃が待っているわけでもないため、あまりお勧めできない作品ではあります。
 ただし、ミステリであることを忘れて1本のエンタメ小説として読むのであれば、その愉しさは折り紙付きです。
 本格ミステリにおけるトリックの必然性とリアリティ軽視に対する批判への回答として、『ピタゴラスイッチ』とそれを観る視聴者の心境を例に挙げてみせたのは言い得て妙だと思った。新本格に大切なのは稚気とロマンですよね。

 それと、真野原(孫)のフルネームが明かされたのって、もしかして本作が初じゃないでしょうか。荒城から貰ったのかしら。お祖父さんの世代から引っ張っての話題もあり、ノンシリーズの『100人館の殺人』なども巻き込んで山口ワールドは増々拡がっていきそうです。これで刊行ペースがもう少し上がってくれれば文句ナシなんだけどなー


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はろーすみす

Author:はろーすみす
シリーズものも平気で数年寝かせる積読家。本格ミステリとスター・ウォーズ小説を中心に読み漁り、新刊・話題作はあまり追っていません。

好きなミステリ作家は古野まほろ、はやみねかおる、西尾維新、霧舎巧。
ジャンル外では築山桂と小川一水。
講談社ノベルスをこよなく愛す特ヲタ。

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