2012.01/28 [Sat]
碇卯人『杉下右京の事件簿』
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★★★☆☆
すみません。コープランドさんからお聞き及びではないでしょうか。
私は日本では刑事をやっておりまして、
犯罪の話となるとついつい首を突っ込んでしまいたくなるのが悪い癖なのです。
警視庁特命係の杉下右京が事件に挑む。舞台は、スコットランドと奄美大島。偶然訪れたスコッチ蒸留所で遭遇する密室殺人。目撃された「巨人」とは? 奄美沖で座礁した船で捕らえられた麻薬密輸犯が逃亡。しだいに浮かび上がる本当の狙い、そしてアクション。「静」と「動」の2編で、右京の推理が冴えわたる。
ドラマ本編のノベライズを担当している碇卯人こと鳥飼否宇による、『相棒』オリジナル小説です。鳥飼版『相棒』は発売時に買ってみたらあまりのスケルトン小説で(意識してそうしているらしいですが)揃えていくのを断念。そんな経緯もあってこの小説も、発売のアナウンスがあっても当然のようにスルーしていました。
が、 昨年度の『本格ミステリ・ベスト10』のアンケートで本作を1位に推している人がいて、これは読まねばなるまい――ということで今回手に取ってみた次第です。
収録されているのは全2編。Season 2 第1話の冒頭にて右京さんがロンドンを訪れていた時期と、Season 7 「レベル4」以降の薫ちゃんがサルウィンに旅立った後、「特命」にて神戸君が着任してくるまでの間のいわゆる“ひとり相棒”期間の右京さんを描いたミステリ中編になっています。
『相棒』というドラマ自体がもともと本格ミステリから社会派、ユーモア、日常の謎、さらにはテロ事件まで手広く扱っている作品なこともあって、バリバリの本格ミステリ調でも何ら世界観を逸脱していない。この懐の広さが『相棒』の魅力であり、最大の特徴ですよね。
ハセベバクシンオーの『鑑識・米沢の事件簿』は自分の中のキャラクター像と若干のズレを感じましたが、そこはさすがにノベライズ版でかなりの数をこなしている鳥飼さん。万人が読んで万人が右京さんだと思えるキャラクターを見事に再現しています。
第1話「霧と樽」の巨人の正体や第2話「ケンムンの森」の事件の真相は正直なところ速攻で見抜けてしまい、本格としての難度はさほど高いものではありませんが、実写でやってしまうとさすがに物議を醸しそうな本格らしいトリックを動員した『相棒』という観点からも、ファンならば読んで損のない一冊でしょう。
『スター・ウォーズ』や『ターミネーター』、『24 -TWENTY FOUR-』、『LOST』、『CSI:』、『ダークエンジェル』、『スタートレック』といったふうに、海外では有名作家が人気映像作品のオリジナルスピンオフ小説をシリーズとして手掛けているケースが少なくありません。日本ではまだまだそういった土壌は形成されていませんが、今後も色々な作家さんが小説版『相棒』を書き継いでいったらきっと面白いと思う。
『相棒』で孤島ミステリとか読んでみたいよ!
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