2012.01/22 [Sun]
古野まほろ『絶海ジェイル Kの悲劇 '94』
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★★★☆☆
そのとおりだよ公爵閣下
貴様には一箇月の猶予が與えられるが、他の四人はまた別論とする。
すなわち第一週が終了する時点において試験に合格していないときは、
残余の四人のうち任意に撰んだ者が死ぬ。
先の大戦中、赤化華族の疑いをかけられ、獄死したはずの祖父が生きている。そう聞かされた「イエ先輩」こと八重洲家康は絶海の孤島・古尊島を訪れる。しかし、そこにあったものとは……! 隠された孤島。鉄壁の監獄。一望監視獄舎。そして、「ここから脱獄してみろ」という悪意に満ちた挑戦状。空前絶後の脱出劇が開演する!
「イエ先輩シリーズ」第2作。
祖父が生きているという情報を餌に孤島に誘き出されたイエ先輩とユカ。そこには同じように呼び寄せられた、かつて八重洲清康と共に投獄されていたとされる3人の人物の親族と、脱獄囚唯一の生き残りである大炊御門信郎の姿があった。50年前、赤化華族の全員脱獄事件に責任を感じて自害した当時の刑務所長の孫に脅され、八重洲清康と同一方法での再現脱獄劇を強要されることになった彼らは、一望監視の監獄から果たして無事に抜け出すことができるのか?というのが今回のお話です。
どうやら「イエ先輩シリーズ」はガジェット満載、超絶トリック炸裂の新本格路線でいくことが確定の模様。絶海の孤島にある一望監視獄からの脱獄手段は相当にトンデモで、たぶん恐らく実現不可能と言われる類のものでしょう。それだけトリッキーでなんじゃこりゃああ!といった方法が採られています。
でも、このトリックどばーんっ!!のインパクト重視で勝負するのが古き良き新本格の醍醐味ですよね。
前作でさんざん物議を醸した例のトリックを今作でも変形的に用いて、「いや、できるし!」とゴリ押してくるところには笑いました。
とある論理矛盾から不可思議な行動をとっている人物を指摘し、そこから行動理由を詰めることで逆説的に過去にあったであろう事件を炙り出していく工程はロジックに拘るまほろならではの見せ方で、犯人指名→事件発覚という通常とは真逆の推理手順になっているのが面白かった。
ただ、やはりどうあっても“普通の新本格”を脱していないのも確かであり、愉しいは愉しいけれど古野まほろにこういったスタンダードな作品を求めているかというと、ファン的には複雑な心境ではあります。
まぁだからこそ『天帝』シリーズや『探偵小説』シリーズとは別シリーズにして棲み分けているんだ、と言ってしまえばそれまでなのですが。
あと至極どうでも良いことなのですけど、どうしても気になってしまった点がひとつあって。井の頭公園のスワンボートにカップルで乗ると別れるって有名だよね……?
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