2012.01/20 [Fri]
高里椎奈『雪の追憶 フェンネル大陸 真勇伝』
![]() | 雪の追憶 フェンネル大陸 真勇伝 (講談社ノベルス タT-) 高里 椎奈 講談社 2009-08-07 売り上げランキング : 390532 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
★★★☆☆
軽くて、捉え所がなくて、扱い難くて、触ると消えてなくなりそうで。布の中にいるのに明るいの。
でも、厳しい日差しからも冷たい風からも守ってくれる
――初めてこの布を見た時、サチを思い出した。
英雄の弟を捜す、親友サチが消えた。そして人は口々に言う、英雄などいないと。彼は少女フェンに嘘をついていたのか? 深い絶望に襲われるフェン――。それでもサチに会いたい、真実を知りたい、一途な思いが新たな旅へと駆り立てるが、北国トルリオンで事件に巻き込まれてしまう!
「フェンネル大陸 真勇伝」第3作。
前巻ラストでフェンの秘密にさらりと触れたところで、今度はサチの過去篇です。
どんな苦境にあっても常にフェンを側で支え、飄々としていたサチ。「真勇伝」になってからサチの過去をちらつかせる描写が増えてきていましたが、今巻でとうとうその出自が明らかにされます。
基本的に人を殺さない「フェンネル大陸」において、メインキャラクターのひとりにこれだけのものを背負わせるとは。それだけ、著者がサチに込める想いも強いということなのでしょう。
作中のところどころにミスリードを効かせているのは、メフィスト賞作家らしい構成です。とはいえ、高里さんの文体はもともと地の文が少なめで状況把握をし難いところがあるので、それが思った以上に混乱を招く原因にもなっています。素直に騙されるというよりも、どこか読み落としたのではないかと自分を疑ってしまう方が強く出て、結果として物語の全体像がややわかり辛くなっているきらいがありました。
『太陽と異端者』でテオとの、『雪の追憶』でサチとの絆を再確認し、フェンはいよいよ祖国へと向かう決意を固める。すべてを失った少女がやっとここまで来ました。正伝も残すところあと2冊。いよいよ大詰め、クライマックスです。
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