2009.07/01 [Wed]
湊かなえ『告白』
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★★★☆☆
みんなも有意義な春休みを過ごしてくださいね。一年間ありがとう。
愛美は事故で死んだのではありません。このクラスの生徒に殺されたのです。 我が子を校内で亡くした女性教師が、終業式のHRで犯人である少年ふたりを指し示す。
ひとつの事件をモノローグ形式で「級友」「犯人」「犯人の家族」から、それぞれ語り、真相に迫る。
今更ながら2009年の本屋大賞第1位、湊かなえのデビュー作『告白』を読みました。
これが全国の本屋さんが選んだ“みんなに読んでほしい本”……まーじでーすかぁ?(Buono!風に)
しかし鬱小説ですよ、鬱小説。面白くなくはないけど――面白くはあるけれど、それでもこういう本、人に読ませたいですかね?書店員、もっとハッピーな本をすすめなさい!古野まほろを(ry
(以下、ネタバレ)
はい、さて。内容。
どんな脇役やモブキャラにもその人の人生=物語があるということを信条としている自分としては、こういう形式の小説は好き。でもこういうストーリーが好きかと訊かれれば、好きじゃないタイプ。
歪んだ人々による狂いに狂った歯車と、悪徳の連鎖。最初から最後まで本当に救いようのない小説。まあ、たまには良いけど。
娘を殺された森口先生。犯人ふたりを裁いて、説教を垂れて、あなたの考えなど所詮は短絡的で自己中心的と、まぁそんなことを言うわけです。
けど、なんだかんだいって、彼女もやっぱりおかしくて。子供が殺されたから復讐に奔るというのはわかる。けれどその執拗さ。そして非道さ。己の復讐の為ならば他人は犠牲になって当然という考え方。挙句、ふたりを裁いて恍惚そうな彼女は、見つめられただけで切れてしまいそうな刃物。決して事件がきっかけで堕ちたわけではなく、それ以前の段階で既にその素養があったと考えるのが妥当でしょう。おそろしす。
一応、文面だけ見れば子供を殺された親と、そこから破綻の連鎖をきたす「世界」が描かれているわけで。ここでの森口先生の役割は「娘を喪ったことで良心を失くし、復讐に奔る母親」なんだけど、ここで注目すべきは、森口パートは口から"言葉として"出たセリフのみで構成されていて、内面は全く描かれていないというところ。たぶん意図的でしょうね、これは。
他の人のパートから考えても、"言葉"として書かれた文は100%が本心ではなくてそこに別の意図が隠れていることが多い。加えて、この個々のパートで内面の歪み加減が露呈している。なのに森口先生だけは内面が明かされない。その刃物の内面が。
これってつまり、最終的には読者に森口同情票、森口理解票を入れて貰いたい(つまり真っ当な人間が復讐に奔ったわけで、とりあえず森口先生は“まとも”だった、という図式を成立させたい)という考えが著者の方に少なからずあるのだと思います。でも、あそこまで非道になれる森口先生は十中八九、はじめから残酷な性格だから……。
はうあ。かなかな(勝手にあだ名)の小説は他の作品もこんな感じみたいだし、後味悪い作家として突き進むのかしら。とりあえず私的には、もういいです。
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