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300冊の積読本もなんのその、本や映画の感想などをつらつらと述べてみたり。

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西尾維新『恋物語』

恋物語 (講談社BOX)恋物語 (講談社BOX)
西尾 維新 VOFAN

講談社 2011-12-21
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★★★★☆
だが、なろうと思わなきゃ、なれないものだぜ――神様とか、幸せとかと違って
“片思いをずっと続けられたら――それは両想いよりも幸せだと思わない?” 阿良々木暦を守るため、神様と命の取引をした少女・戦場ケ原ひたぎ。約束の“命日”が迫る冬休み彼女が選んだのは、真っ黒で、最悪の手段だった……。「物語」はその重圧に軋み、捩れ、悲鳴を上げる――。


「化物語」第10作にして 2nd season 最終作。
 んんー? あらすじ詐欺ですか、これは。『囮物語』のラストにて、蛇神様となった千石撫子は阿良々木くんを殺そうとするものの、ひたぎの交渉によってXデーを卒業式の日まで延ばすことを約束します。確かにその通りで間違ってはいません。でもまさか、このあらすじがその出来事を指していただなんて誰が思うでしょう。
 私はてっきり、ひたぎ阿良々木くんを救うために彼の反対を押し切って某かのやばい相手と“契約”を結ぶ話かと……。というかそもそも、片思い云々のセリフですらひたぎのものじゃないですし、事前に受けるイメージとは大きく異なる作品でした。

 そんなわけで、ひたぎが対千石撫子用に講じた最終手段は、自らの仇敵・貝木泥舟に「千石撫子を騙してほしい」と依頼すること。「化物語」2nd season 最終巻は、まさかまさかの貝木泥舟が語り部です。
 『花物語』でほんの少しだけ垣間見えた貝木の意外と義理堅い一面がより掘り下げられ、阿良々木くんと同族ともいえそうなほどの、その人の好さがたっぷりとクローズアップされています。ここらへんの、視点の違いによるキャラクターの掘り下げは 2nd season のテーマではあるのですが、それにしたってヒロインでもサブヒロインでもなく、ましてや女性キャラですらない貝木でやってしまうとは。もう誰の物語が出てきても驚きませんね。

 他人を路傍の石程度にしか考えていなかった千石撫子。無慈悲で冷酷で非情な神様と化し、もはや後戻りのできないところまでいってしまった彼女を最終的に日常のレベルまで引き下げたのは、他人から見れば大したことのないようなほんの小さな恥じらい事で。女子中学生の恋愛話が街ひとつを余裕で滅ぼせる最凶のラスボス誕生に繋がり、最終的にはちっぱけなお悩み相談の構図に落とし込んですべてを解決に持っていく――。デビュー当時から「脱格」だの「セカイ系」だのとさんざん言われてきた西尾維新の最も得意とする作風ではないでしょうか(「なでこスネイク」でのギャグみたいな掛け合いがめちゃくちゃ重要な伏線になっていて吹いたw)
 「天才が多すぎる」「キャラクターが記号」「人間が描けてない」といった批判ももはや過去のものです。西尾維新は本シリーズで記号的なキャラクターを操っていることを重々承知した上で、その中に人間を書き込むという所業を試みているのですから。
 青春×怪異を二本柱とした「化物語」の原初に還った、実にシーズン・フィナーレらしい一作です。

 いましている恋が常にいちばん。思えば、副題が「ひたぎエンド」の割にひたぎの出番が殆どないのは、阿良々木くんと出逢った時点でひたぎはすべての意味で救われて、これ以上描くべきことがなかったからなのかもしれません。

さて、巻末にてファイナル・シーズン3作品の告知がありましたが、扇ちゃんの正体を明かさないでクリフハンガーとか、海外ドラマじゃあるまいし、さすがに引っ張りすぎなんじゃないかい?


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はろーすみす

Author:はろーすみす
シリーズものも平気で数年寝かせる積読家。本格ミステリとスター・ウォーズ小説を中心に読み漁り、新刊・話題作はあまり追っていません。

好きなミステリ作家は古野まほろ、はやみねかおる、西尾維新、霧舎巧。
ジャンル外では築山桂と小川一水。
講談社ノベルスをこよなく愛す特ヲタ。

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