2012.01/09 [Mon]
映画『モンスターズ/地球外生命体』
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★★★★☆
アメリカは外からだと違って見える。すぐ外から眺めているだけなのに。
太陽系に地球外生命体の存在を確認したNASAは、探査機を使いサンプルを採取する。しかし、大気圏突入時にメキシコ上空で大破してしまう。その直後から、地球外生命体が増殖をし始め、メキシコの半分が隔離される事態に。それから6年後、“モンスター”たちにより多大な被害を受けているメキシコでスクープを狙うカメラマンのコールダーは、怪我をした社長令嬢のサマンサをアメリカ国境まで送り届ける役目を与えられる。 (2010年 イギリス)
超低予算で作られた通常のエイリアンものSFとは一線を画す異色のロードムービーということで興味を惹かれ、公開直後から気になっていた作品です。ただこの映画、極限に注目度が低かったのか上映は日に1回、それもレトショーのみだったので結局観には行けませんでした。
その上、DVDレンタルもTSUTAYA限定とかどうなのよ。最近そういった商法が増えていますけど、ふざけんなって感じですよね。良い作品は少しでも多くの人に観て貰いたいし、そうされるべきだと思う。第一、TSUTAYAが近所にない人はどうしろというの? TSUTAYAディスカスに入会しろってこと? まったくもって酷い話です。
それはともかく『モンスターズ/地球外生命体』、低予算作品であることが信じられないほど作り込まれた世界観を見せてくれました。モンスターによって人間が住めなくなってしまった危険地帯の荒廃具合や、モンスター被害よりもモンスターへの爆撃による二次被害を受けた人々の抗議跡は非常にリアリティを醸し出しています。
中でもアメリカが自国を守るためにメキシコとの国境に何者も越えられない巨大な“壁”を建造している事実をコールダーたちが初めて見知るシーンのインパクトは凄まじい。幼い子供ですら死と隣り合わせの疲弊したメキシコに対して完全に見て見ぬフリを決め込み、自分たちは壁の向こうで悠々と暮らしている。
モンスターにしても確かに無慈悲な殺戮行為はしています。しかし、それらはすべて自分たちが攻撃された場合に限ってのことで、こちらが手を出さなければそのままスルーされるのに、人間はそのことに気付かず自衛のためと武器を取る。
『クローバーフィールド/HAKAISHA』のヒット以降、世界の運命を直接左右しない“一市民から見たSF”がいくつも作られましたが、本作はそういった話題性だけを追った何番煎じ映画とは異なり、痛烈な社会批判を秘めたメッセージ性の強い映画でもあるのです。
エイリアン映画としては考えられないほどゆったりとした時間が流れる本作は、基本的にコールダーとサムが国境を目指す旅の過程を淡々と描いていきます。はじめは押し付けられた関係だったふたりは異郷の地で同じ時間を重ねることで心を通わせていくも、アメリカに着いたらこれまで通りの生活に戻らなくてはならない。お互いに待っている「現実」があり、二度と同じ道を歩むこともない――。
そう、この作品はモンスター映画的なギミックを用いた、とびきり純粋な恋愛映画なんです。しかも最後の最後で、恋愛ものとしてのオチにエイリアンの存在が大きく寄与してきます。こういった作風は結構珍しいのではないでしょうか。
わあきゃあ騒ぐようなパニック映画とは明らかに路線が違うので賛否両論あるかもしれませんが、私は全力でオススメしたいですね。エイリアンのCGもさり気にクオリティが高いです(ここ、重要!)
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