2012.01/08 [Sun]
ティモシイ・ザーン『スター・ウォーズ 忠誠(下)』
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★★★☆☆
そうとも。われわれはきさまらのような反逆者から、市民を守る誓いを立てているんだ
レイアは帝国から独立するというディズラ行政官の嘘を見抜いたが、時すでに遅く、宇宙港が封鎖された。ヴェイダーと501部隊が到着すれば彼女の命はない。レイアの危機を察知したルークは、ハンと共に救出に向かう。彼らと行動を共にするのは「裁きの手」と名乗る5人のストームトルーパー。一方、帝国保安局は海賊基地に潜入したマラ・ジェイドを暗殺すべく、爆撃を開始した――。スローンと帝国の遭遇を描く短編『ミスト・エンカウンター』を巻末に収録。
「ハンド・オブ・ジャッジメント」第1作。下巻。
シリーズ名がシリーズ名だけにラローンたちハンド・オブ・ジャッジメントの5人が主役かと思いきや、実質的にはマラの物語でした。パルパティーンに忠実に仕える一方で、任務中に助けられた人間に対して温情と優しさを持って接するマラ・ジェイドはとても冷酷な帝国のエージェントには見えません。ダース・ヴェイダーのようなシスでもなければアサージ・ヴェントレスのようなダーク・ジェダイでもない。要するに暗黒面に堕ちていはいないわけです。
彼女の使命は帝国に害を為す“悪人”を排除することで今回の場合はそれが海賊であり、汚職に塗れたコアード総督だったのですが、そんなマラととてもよく似た役割を担っていたのが、誰あろう旧共和国のジェダイ・オーダーそのものです。腐敗し切った政治、各地で勃発する反乱、共和国を滅ぼそうとする戦争の火種……。新三部作の時代、それらを消して回っていたのが共和国に仕えていたジェダイたちでした。『EP3』で帝国へと変わり、そんな世の中になってまったく同じことを実行しているのがこの作品のマラなのです。
旧共和国のジェダイたちが綻びつつある共和国の諸悪の根源がパルパティーン元老院議長であることを見抜けなかったのと同様の構図で、いまマラが皇帝と帝国に忠実な僕であろうとする。だからマラ自身は帝国自体を悪とは思っていないフシがあるどころか、純粋な心で帝国の正義を信じています。
一方で自分たちが守ってきた帝国が何やら間違っているらしいと真実を知ったのが、本作に登場するハンド・オブ・ジャッジメントであり、彼らの存在と未だに“目覚めていない”ままのマラ・ジェイドと実は対比されているんですね。
また、本作ではルークとハンたちがハンド・オブ・ジャッジメントと共同戦線を張る場面があり、反乱軍と帝国兵という正反対の立場にある彼らの理想が実際には同じところにあることが語られるのも興味深いです。
サーガ的に見るとジェダイの歩み始めたルークがオビ=ワンの声に導かれてフォースの扱い方を教わっていく過程、ルークたちを助けるためにデス・スター破壊に手を貸したことで反乱軍の一員として扱われるのに不満を持つハンが如何にして心を決めたのかも描かれ、ついでにハンとレイアのラブコメちっくなやりとりも楽しめます。
米国では本シリーズの続編『Choices of One』が既に発売されていますが、これについては人気のザーン作品なので邦訳確実といって良さそうです。現在刊行中の「ボバ・フェット」の次あたりに来そうな予感。個人的には『The Force Unleashed Ⅱ』を先に出してくれるとありがたいのですけど(まさか出ないとかないよね?)
ちなみに本書にはボーナストラックとして、スローンが帝国に加入するキッカケとなったエピソード「ミスト・エンカウンター」が併録されています。時系列は『EP3』の1週間後ということなので『暗黒卿ダース・ヴェイダー』のちょうど真裏あたりでしょうか。「SW」の短編は初めて読みましたが、正直物足りなかったです。ブースター・テリックのような名のあるキャラが出てきて嬉しい反面、結局スローンの俺TUEEEE!!小説になっちゃっているのがなぁ……。一応、ミスローニュルオド氏の登場作は『外宇宙航行計画』を読んでいるものの、やっぱり「スローン三部作」を未読なのが大きいのかしら。竹書房、早く復刊してくれ!
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