2011.12/31 [Sat]
ティモシイ・ザーン『スター・ウォーズ 忠誠(上)』
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★★★☆☆
ついさっき、ラローンは道徳的な権威について口にしたが、
われわれ帝国を代表する人間が道徳観念を持っていないとしたら、誰が持っているんだ?
ヤヴィンの戦いから数か月後。ダース・ヴェイダーはデス・スターを破壊した反乱軍の青年について躍起になって調べていた。そして、プリンセス・レイア、ルークとハン・ソロ、皇帝の手マラ・ジェイドがそれぞれの任務でシェルシャ宙域に向かうことになった。同時期、冷酷非道な上官を射殺したストームトルーパーが4人の仲間と共に脱走した。運命に導かれた者たちの錯綜する道がひとつになるとき、それは……。
『スター・ウォーズ 忠誠』上巻。
“スター・ウォーズの原点に回帰!”の煽り文どおり『EP4』と『EP5』の間――もっと具体的には『EP4』の7ヶ月後に当たる物語です。それだけにルークもまだまだヒーロー然とはしておらず、田舎惑星から出てきたばかりの人の好い青年といった感じで『EP4』で描かれたキャラクター性の再現度が驚くほど高いです。心理的な駆け引きに不得手で、危うい発言をしそうになる度にハンがフォローに回る様子は、後年の“ジェダイ”ルーク・スカイウォーカーに慣れ親しんだ身からするとかなり新鮮に映りました。
他にも反乱同盟軍の一員として扱われるのを厭うハン・ソロやハンに対して絶賛ツンデレ中のプリンセス・レイア、皇帝の手として現役で活躍中の18歳のマラ・ジェイド等、主要キャラたちの初々しい姿を見られるのが嬉しいですね。
マラなんかは確かに皇帝の刺客ではあるのですが基本的に性格は変わっていなくて、任務中に世話になった将軍を罰しないようにパルパティーンに進言したりと普通に優しい良い娘です。それに比べてヴェイダー卿は将来の息子の嫁に対して妙に対抗心を剥き出しにしちゃったりして心が狭い。こういうところがアナキンのダメなところなんだよなぁ。一方のマラは「同じ帝国に仕える立場なのにどうして仲良くできないのかしら?」だもん。人間の出来具合が違う。
本作の主役格は現在の帝国のやり方を快く思っていない、帝国臣民に忠誠を誓ったストームトルーパー5人組です。“裁きの手(ハンド・オブ・ジャッジメント)”と自称する彼らはあくまでも民を守るために戦い、人々の平穏を脅かす汚職官僚や反乱軍を打倒しようと、自らの危険も顧みず活動を続けます。
いつもはルークたちの視点から物語を見ているので忘れがちではありますが、本当に住人の平和を守りたいと思っている高潔な帝国兵からしてみれば、反乱軍は弱い人々を戦乱に巻き込もうとする犯罪者なんですよね。帝国にだって善良な兵士はたくさんいる。3~2BBY『フォース・アンリーシュド ダース・ヴェイダーの弟子』→1~0BBY『デス・スター』→0.6ABY『忠誠』と、エフエックスから刊行されているスピンオフ小説が期せずして「帝国から見たSW」、「SWの裏側にある物語」を流れで描いているのは面白いところです。
ラローンとマークロスを除いたハンド・オブ・ジャッジメントの3人のキャラが弱く書き分けができ切っていないのと、なんとなく勘違いが重ってストーリーを転がしている感が否めないのは若干気になりましたが、下巻にも充分期待できそうです。
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