2011.12/23 [Fri]
高里椎奈『終焉の詩 フェンネル大陸 偽王伝』
![]() | 終焉の詩 フェンネル大陸 偽王伝 (講談社ノベルス) 高里 椎奈 講談社 2007-03-07 売り上げランキング : 472581 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
★★★☆☆
テオ。私、英雄にはなれないけど、偽王になる
強国シスタスがソルド王国を再び侵略―最悪の報せが偽王フェンベルクに齎された。小国に残る友を救うため、戦いと恐怖の連鎖を断ち切るため、彼女は全ての元凶シスタス皇王がいる地へ。だが辿り着いた敵の中枢部で見たのは、強国が隠し続けた闇と思いもよらぬ人物だった!!
「フェンネル大陸 偽王伝」最終作。
第一部、完。多くの人間といくつもの国々を巻き込んできたシスタス聖国の侵攻。その規模の割にはいとも簡単に終結してまった感は否めません。敵味方双方に目に見えた戦死者を出すこともなく(いや、「外」ではそれなりに出ているのでしょうけれど)戦争と政争を描くファンタジー小説としてはこの終局は些か物足りない。
本シリーズの二大条項である「立てたキャラは基本的に殺さない」「根っからの悪人はいない」が足を引っ張っちゃているというか。どんな状況に陥っても死ぬことがないとわかってしまうと、綱渡り的なはらはらどきどきが無くなってしまいます。ここまで延々引っ張ってきたシスタスの裏事情をたったの一言で片付けてしまったのも、さすがにご都合主義ではないかと。
しかし、そうなってくるとフェンを追放したストライフにもそれなりの事情が隠れているハズで。新シリーズへの訴求力は充分です。
最終巻とはいっても偽王となったフェンが周りから祀り上げられて真の王になるという展開は勿論待っていません。これは個人的に良かった点です。フェンの目的は世直し行脚ではなくて世界の真実をその目で見ること。あくまでも一部外者であり、ただの旅人です。そんな何の力のない彼女が一生懸命に自分ができるせいいっぱいで相手と話し、その真っ直ぐさと頑固さが後戻りできないところまで進んでしまった人の心を解きほぐして、人を、国を、変えていく。
銀の髪の英雄。偽王。実体の掴めないとある少女の辿った軌跡――それこそが西方大陸を舞台に紡がれ、囁かれる物語「偽王伝」なのでしょう。
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