2011.12/20 [Tue]
ドラマ総評:『南極大陸』
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★★☆☆☆
昭和30年代。戦後10年を過ぎた頃、日本は失いかけた自信を取り戻すべく、人々はがむしゃらに働き経済を立て直していたが、世界からは 「 マネをする国 」 「 敗戦国 」 とレッテルが貼られていた。その頃、世界各国で地球観測の動きが活発になっていた。アメリカ、ソ連など戦勝国を中心に 「 国際地球観測年特別委員会 」 が設置され、未知の大陸 「 南極 」 観測が計画される。アジア諸国で唯一参加を表明した日本は、「 敗戦国の日本 」 に何ができるんだと世界から罵倒され、全く期待されていなかった。「 今こそ日本人の底力を見せてやろうじゃないか。こうして日本の南極観測は「 国際社会復帰の一大プロジェクト 」 になった。しかし、前人未踏の大陸は南極越冬隊に容赦なく牙をむいた。そんな越冬隊を支え心の拠り所になったのが、19頭の樺太犬だった……。全10話。
「戦後日本の頑張ってる俺たち」なドラマはもう良いよ。充分にわかったから。あの頃の日本人は~という懐古的な部分が強すぎるのが、その時代を生きていなかった自分にとってはどうにも合わなかったです。
ドラマとしては次回への訴求力に乏しかったのが最大の欠点だと思います。というのもこの作品、悪い意味でテンポが早すぎるのです。日本を発った第一次観測隊が南極に着くまで実質1話。その間にはトラブルらしいトラブルもなく、どう見ても南極に行くことがそこまで難しい所業には感じられません。南極に着いて昭和基地を設営してからも同様で、困難だ困難だと言っていた越冬隊の1年があっという間に過ぎてしまう。
そうじゃないだろう。南極に至るまでの過程にあったハズの数々の困難を乗り越えていく様、越冬がいかに厳しく長く孤独な闘いだったのかを観たいんですよ。そこを端折ってどうするんだよ、と。このドラマには前人未到、未知の大陸を踏破していく冒険的な要素がまったくありませんでした。もっと『七つの海のティコ』や『ふしぎの海のナディア』のようなロマン溢れる物語を期待していたのですが……。
全編に渡って南極らしさが出ていなかったのも問題です。登場人物たちの言動もそうですが、観ている映像から寒さがまるで伝わってこない。画面全体に寒色系の色味を付けるなど、もうちょっとやりようがあったのではないでしょうか。
そして極めつけは倉持たちが南極を去った後、残された犬たちの様子を描くという暴挙に出たこと。置き去りにされた犬たちの様子がわからないから不安感が募るし、逢えないからこそいざ再会できた際に感動が込み上げてくるわけですよ。仲間である犬たちを置いてこざるを得なかった第一次越冬隊の彼らと同じ感情を視聴者にも共有させるというのは、本作で恐らく最も大切にしなければならないポイントなのですが、それができていなんですね。
危うく氷の下に落ち掛けた風連のクマの鎖を他の犬たちが引っ張って助けるシーンなんてはっきり言って失笑レベル。なんで動物にこういうことさせるかなあ。アニメじゃあるまいし、こんなことやるわけないんですってば。何故それがわからない? 残留パートのあまりにも作り物染みた演出の数々に萎えさせられました。
樺太犬をどうにか連れて帰れないかと直訴する場面や置き去りにしてしまったことへの後悔、リキを南極に残してしまったことで容赦なく糾弾される倉持など良かった箇所がないこともないのですが、それ以上に悪い点が目立ち過ぎてとても擁護はできないです。
見優と吉川慶による劇中音楽は素晴らしかった。
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