2011.12/15 [Thu]
北山猛邦『猫柳十一弦の後悔 不可能犯罪定数』
![]() | 猫柳十一弦の後悔 不可能犯罪定数 (講談社ノベルス) 北山 猛邦 講談社 2011-12-07 売り上げランキング : 156328 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
★★★★☆
いのちだいじに!
犯人を捕まえるのはあとでいいんです。まずは無事にこの島を出ることが大事です。
日本で唯一、探偵助手に関する技能と実戦を学べる、大東亜帝国大学・探偵助手学部。そこに通う2年生、君橋と月々の気分はどん底だった。名門ゼミ入り審査に落ち、悪ふざけで希望を出した知名度ゼロの猫柳ゼミ行きが決まったから。そう、指導教官は功績不明かつ頼りなさげな女探偵・猫柳十一弦。彼女の下では立派な探偵助手になれないのか(涙)? だが名門ゼミとの合同研修が決まり、人生大逆転をめざし孤島の館へ。その合宿中、奇怪な殺人事件が発生する。
某紀伊國屋書店にてサイン本 ゲットだぜ! ヤッターー(マシ・オカ風に)
25歳にして名探偵号を持つ女教授・猫柳十一弦が身体を張って傷ついて、満身創痍になりながらも連続殺人事件阻止に奔走する孤島ミステリ。弱気ながらも芯は強くて誰よりも人を救いたい名探偵と、それを支える助手ふたりのキャラクターが抜群に良く、読んでいてとにかく楽しかった。是非ともシリーズ化してほしいですね。
ミステリとしては極めてシンプルな孤島もので、ミッシング・リンクによって浮かび上がる犯行方法の意図するところは意外ではあるものの、謎解きそれ自体が飛び抜けて素晴らしいということはありません。しかし、この作品の書かれた意義はそれとはまた別の部分にあります。
いまや誰もがケータイを持っていて、孤島であってもインターネット環境に容易にアクセスできるようになったこの現代。孤島が孤島であり、館が館であり、山荘が山荘である必要性は既に薄れ、厳密な意味でのクローズド・サークルはもはや殆ど実現不可能です。そういった流れの中で既に過去のものとなりつつある新本格がこれからのミステリの中でどう在るべきなのか、その進むべき指針を示してみせたのが本作だと思います。
また、これまでにもミステリは、名探偵が連続殺人があらかた終わった後で「はじめから犯人はわかっていました」なんて滔々と語り出すパターンを揶揄されることもありましたが、まさしくそのとおり。そういった時代はもう終わったし、いつまでもそこに留まっていちゃいけないんです。本作の探偵役を務める猫柳十一弦と彼女の信条、行動こそがいわゆる名探偵像に対するひとつの解答なのではないでしょうか。
従来までのオーソドックスなミステリを踏襲しながらも新しい時代の探偵小説を目指す。その点が評価されれば、来年度本ミス20位圏内も或いはあり得るかもしれません。
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