2011.12/03 [Sat]
望月守宮『無貌伝 ~人形姫の産声~』
![]() | 無貌伝 ~人形姫の産声~ (講談社ノベルス) 望月 守宮 講談社 2010-12-07 売り上げランキング : 506578 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
★★★★☆
簡単に言うと、遥はこの島の女王なんです
これは在りし日の名探偵と生まれいずる怪人の物語――。「人形を見せてあげる」遥はそう言って、怪異が集まる島に秋津を誘った。そこに住むのは、幼き彼女の姿をした人形と、男たち。遥の失踪。消えた一日の記憶。破られた封印……。命の灯が一つ消えるたび、一体の人形が動き出す。孤島に秘められた悲愴な真実に秋津はたどりつけるのか。
「無貌伝」第3作。
2巻目までの時系列から大きく遡って、まだ名探偵になる前の秋津承一郎が主役の過去編です。過去話ということで秋津が無貌に顔を盗まれるエピソードが明かされるのかと思いきや、それとはまったく別のストーリーでした。望月さんによると本シリーズは時系列には拘らず、そのときその場面で起こった独立した出来事をピックアップして書いていくらしく、それぞれの物語が集まって最終的に「無貌伝」という1本のサーガを形作るようです。この展開の仕方は「スター・ウォーズ」に近いものがありますね。唯一無二の世界観を確立するという意味では非常に効果的だと思います。
ヒトデナシの使い方も3作目となるとかなりこなれてきて、既刊の中では最もしっかりミステリしていました。中でも、命を移すヒトデナシ・一初瀬の特性の裏を掻いた推理はルールものの醍醐味。なぜ人間から人形に命を移し替えたのか、という動機部分もまさに「無貌伝」の世界だからこそ成立する解答です。その意外性ある真相が明らかになった瞬間、読者は霧が晴れたかのように事件の全体像を掴むこととなり、そこに込められた純粋な想いに深く感じ入らずにはいられません。この構成は見事。
遥さんのヤンデレ具合は半端ない。秋津探偵もよく結婚を決意できたよ……。もし彼女が自分から夫の存在を奪った無貌と再び対峙した日には、無貌が血祭りに上げられることは確実ですね。オソロシス。
スポンサーサイト
Comment
Comment_form