2011.11/28 [Mon]
円居挽『烏丸ルヴォワール』
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★★★★☆
そう思えたんなら、それでいい。大人になるのはまた明日だ。後は本当の大人に任せな
京都の支配にもかかわるという謎の書『黄母衣内記』の所有者が不審死を遂げ、二人の弟の間で書を巡って争いが勃発。名門、龍樹家の若き論客たちは、依頼人から仕事を受け、私的裁判双龍会に臨む。ところが、瓶賀流は覆面をした正体不明の怪人“ささめきの山月”に誘われ、御堂達也ら龍樹家側の仲間たちと対決することになってしまう……。
「ルヴォワール」シリーズ第2作。
完全に瓶賀さんが主役だコレ。双龍会で勝ない三流でも、騙され通しで泥臭い闘い方しか出来なくたって構わない。それでもその生き様はこんなに恰好良い。最初から最後まで瓶賀さんの人間的魅力に尽きる物語でした。
達也とか一応主役で実力者なんだけど、はっきりいって龍樹家の中では一番影薄いよね? あんまり出木杉くんでもダメだということか。難しい。
どんでん返しに次ぐどんでん返しで話題を掻っ攫った前作同様、本作もまた第一章から飛ばしています。しかもこれを踏まえてどんでん返しその2があるわけで。円居挽自身は確か以前に、もともと『丸太町ルヴォワール』をいわゆる叙述トリック推しの方向では考えていなかったと述べていたように記憶していますが、本作を読むと期せずしてそれがシリーズカラーになっていきそうな気配が濃厚です。
さらに今回はストーリーの面においても物語をひっくり返してくるような場面があり、これが作品を格段に面白くしている。ミステリにおけるサプライズとは異なりながらも、この掌の上で転がされている感覚は紛れもなく双龍会の臨場感。ミステリ的な見せ場である裁判パートの存在とお話の部分が互いに深く結びつき、いち小説としての完成度がすこぶる高いです。
双龍会に割かれるページ数が前作に比して圧倒的に少なく、大半を事前調査と準備に費やしているのでともすればあっさりと解決に持っていったようにも見えます。しかしそれは大きな間違いで、まさしく準備段階、情報集めから双龍会は始まっているのです。
ラストも相変わらずの素敵ハッピーエンド。早くも次作に期待してしまいますね。
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