2011.11/21 [Mon]
長沢樹『消失グラデーション』
![]() | 消失グラデーション 長沢 樹 青山 裕企 角川書店(角川グループパブリッシング) 2011-09-27 売り上げランキング : 306809 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
★★★☆☆
椎名が話してくれた状況を考えると、一生懸命に前に進もうとしてたとしか思えない。
頑張って生きるために、切ってたって
私立藤野学院高校のバスケ部員椎名康は、ある日、少女が校舎の屋上から転落する場面に遭遇する。康は血を流し地面に横たわる少女を助けようとするが、少女は目の前から忽然と消えた。監視された空間で起こった目撃者不在の“少女消失”事件。複雑に絡み合う謎に、多感な若き探偵たちが挑む。
第31回横溝正史ミステリ大賞受賞作。
角川っぽいなぁ、というのが第一印象。適度なキャラっぽさを保ちつつ会話で魅せて、最終的に主人公の成長劇として落とす。これぞ青春ミステリ! 角川書店としてはポスト古典部、ポスト“ハルチカ”を狙う気満々なのでしょう。確かに、それに見合う実力を持ち合わせています。
一種の時間的な密室をクリアするためのトリックに高校ならでは、このキャラ設定だからこその要素を活かしてくる点が素晴らしい。伊達や酔狂、流行に乗ってなんとなく青春ミステリを題材に選んだわけじゃないんですよ、と。
ただ、キャラクターの配置やステータスが流石に都合良く作られすぎているのが気にならなくもない。作中にてあるトリックを行うためだけにかなり極端なことを仕出かしているのです。私はミステリに対していわゆるリアリティの類は求めてはいないし、マンガちっくなキャラ立てはむしろ好きな方です。しかし仮にも一般小説の、それもトリックに関わる部分でひとりならまだしもふたり以上の人間を特殊なパーソナリティの持ち主にするのは、演出的にはちょっと作為を感じてしまいます。ヒカル君の扱いもまた然り。これがアニメやライトノベルだったらそれもアリなのですけど。
今後はその辺りの塩梅を上手く調整して書いていくことが求められそうですが、何はともあれこれからの活躍に期待したい新人さんがデビューしたのは喜ばしい限りです。
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