2011.11/15 [Tue]
杉山幌『嘘月』
![]() | 嘘月 (講談社BOX) 杉山 幌 キナコ 講談社 2011-08-02 売り上げランキング : 435809 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
★★★☆☆
笑って、取ってやるから動くなよと続けてから、鈍感キャラではないおれは、
実在しない蛾を追い払うフリをしながら、瀬谷の頭を撫でた。
生徒の「能力」の研究・開発を目的とする高校・織乃学園。中でも数人しか居ないSランク特待生である猫目の美少女・瀬谷伊音は、何の能力も持たない「おれ」こと佐々木理久を妙に敵視している。理由は理久がみんなに吐いている、ある『嘘』……。そんな中、「異常者の集まる織乃学園に罰を」という血文字の落書きが出現して――!? 『嘘』が分かる彼女と、みんなを『騙』しているおれ――ふたりの微妙な関係は、学園に潜む悪意に呑み込まれていく。
電子書籍雑誌『BOX-AiR』からの単行本化という珍しい経緯を持つ1冊。遂にこういう時代がやってきたか。それが理由なのか、はたまた講談社BOXだからなのかはわかりませんがこの本、めちゃくちゃ高いです。200ページないのに1050円ってどんだけなの。しかし、それで損をしたとは思いません。続刊が出たら迷わず購入してしまうくらいに面白かっです。
ちょっと斜に構えつつも熱いものを持っているイマドキな主人公も、人付き合いが極限に苦手なヒロインも、脇を固めるキャラクターも総じて魅力的で彼らの織り成す物語をまだまだ読みたいと思わせてくれる。西尾維新『鬼物語』の投げ込みチラシで興味を惹かれて手に取ってみたのですが、これは拾いもの。読んで良かったです。
ただこの作品、キャッチコピーが学園異能ミステリ・青春探偵譚なんですよね。主人公の理久は目の前に謎があれば解かずにはいられない「小市民」シリーズの小鳩君ちっくな探偵脳の持ち主。彼とその友人たちが「能力」の絡んだ不可思議な“事件”を解き明かしていくのですが、それがミステリ風味のライトノベル(講談社BOXは分類的にはライトノベルレーベルで合ってますよね?)の域を出ていないのが惜しい。
そもそも最初の時点で本作における「能力」の在り方を具体的に説明しておかなかったのが最大のミスで、この世界観でいう「能力」とはどんなものとして設定されているのか、その応用範囲や限定条件はどうなっているのかがいまいちわからない。判然としないまま読み進めるから、いざこんな能力が使われていたんですよ、と種明かしされても「ふうん」以上に驚きようがないのです。
同じような設定の学園異能ミステリ系では、蛍たかなの『アイリス・ゼロ』というマンガがそこらへん非常に巧く転がして高水準なストーリーを展開しているだけに、余計にそう感じてしまいました。
そんなわけなので続刊に期待、というか本当に続きを出してほしい(こう見えて、結構ハマってます)
スポンサーサイト
Comment
Comment_form