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積読本は積読け!!

300冊の積読本もなんのその、本や映画の感想などをつらつらと述べてみたり。

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映画『ザ・ウォーカー』

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★★★★☆
核戦争により文明が崩壊した未来。世界で一冊だけ残る本を運び、30年間旅をしている男イーライ。しかし、彼はその目的地を知らない。本に触れる者をためらわずに誰でも殺すイーライだが、彼は旅の目的地を知らない。ひたすら西へ向かう――それだけを手掛かりに歩き続けている。ある日、とある小さな町に立ち寄ったイーライ。そこは、本を探し続ける独裁者カーネギーという男が独裁者として君臨する町だった……。 (2010年 アメリカ)


 デンゼル・ワシントンの出ている映画って面白いものが多いよね? ということで随分前に借りて観たのですが、レビューを書いていないままでした。この映画、かなり本格ミステリ的スピリッツに溢れています。

 舞台となるのは何かが起こって荒廃してしまった世界。いったい何があったのか、詳しい説明はありません。ただし文明の遺物としてiPodが登場するので、いま現在私たちが生きている世界の延長線上にあることだけは確かです。
 けれども逆に、そこが良い。百聞は一見に如かずとはまさにこのことで明度を落して陰影を付けた独特の映像は、有無を言わさず観る者にそこが荒廃した世界であることを感じさせます。加えて、伝える情報を絞ったことによってその“わからない感”が観客とスクリーンの中の人物たちとを同じ立場にしている。滅びた後の世界を体感するには、自分の目に入る以上の知識は不要なのです。

(以下、ネタバレにつき)

 さて。この映画は宗教――キリスト教を題材にしています。滅びてしまった後の世界で何でも良いから縋るものを求める人々、その心を利用して民衆の上に立とうとする街の独裁者、そしてこの世に残された最後の本=聖書を宛てもなく、ただただ西へと運ぶ男の物語。
 基本的に日本人は宗教観に乏しいので、そもそも聖書1冊にそれほどまでの力があるものなのかにまず疑問を抱き、それ故に前提からして受け入れられないという人も多いようですが、それで拒否してしまうにはちょっと勿体ないです。
 最後の本なんて書かれた時点で大方の人間はその正体に見当がついてしまうし、現にその通りではあるのです。しかしイーライが本を運んでいる理由をソラーラに話した瞬間、世界滅亡前の彼が何をしている人間だったのかをヒントに、その超人的なまでの身体能力の秘密、使命感の由来……すべてが完璧なまでに一本の線へと収束されていく。そしてカーネギーに本を奪われた後、イーライの抱えるふたつの秘密が明かされ、それがいよいよ決定的になります。いや、これはすごいですよ。

 原題の『The Book of Eli』は勿論、イーライの運んでいた本のことではあるのですが、それ以上にこの物語そのものを指しているように思います。どこにでもいるような一介の店員が滅亡した後の世界で神の啓示と祝福によって常人ならざる力を得て、30年間もの長い旅の果てに失われてしまった聖書を再びこの世にもたらす。彼は神の加護によって守られ、銃で撃たれても決して死ぬことはなかった。
 つまるところこの映画自体が新しい世界における聖書であり、イーライの物語はこれから先はじまる世界で、何百年、何千年と語り継がれていくであろうことは想像に難くありません。イーライの身に起こったことは紛れもない奇跡で、彼こそが新世界のイエス・キリストである――製作者が本作において表現したかったものはずばりこれなのではないでしょうか。
 ここからスタートする新たなる歴史の中で生き続けるイーライの物語。その悠久の時に想いを馳せてみると、無神論者で無宗教者な私でも感じ入るところがありました。


あと冒頭に出てくるネコの品種がスフィンクスで驚いた。なんでわざわざそんな珍しいものを……。
いや、放射能的な何かで、ってことなのかしら。


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はろーすみす

Author:はろーすみす
シリーズものも平気で数年寝かせる積読家。本格ミステリとスター・ウォーズ小説を中心に読み漁り、新刊・話題作はあまり追っていません。

好きなミステリ作家は古野まほろ、はやみねかおる、西尾維新、霧舎巧。
ジャンル外では築山桂と小川一水。
講談社ノベルスをこよなく愛す特ヲタ。

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