2011.11/10 [Thu]
マイケル・リーヴス&スティーヴ・ペリー『スター・ウォーズ デス・スター(下)』
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宇宙戦で一対一で戦って、敵機を撃ち落とすならともかくね。ぼくも行くよ。
帝国がデスペイヤーとオルデランでしたことは……あんなことは正しくない。
デス・スターの力を過信するターキンやモッティを、ダース・ヴェイダーは冷めた目で見ていた。真の力はフォースに、ダークサイドにあるのだ、と。始動したデス・スターに反乱軍のレイア・オーガナが連行され、冷酷なターキンの命令で平和な惑星オルデランが破壊されると、帝国軍内部にも動揺が走る。常軌を逸した破壊を目の前にして、数人のグループは帝国を離反し、デス・スターからの脱走を決意した。だが、トラクター・ビームが無効にならないかぎり、脱出は不可能だ。デス・スターは反乱軍基地のある星を破壊すべく、ヤヴィン4へと接近。刻一刻と破滅の瞬間は近づいている――。
「スター・ウォーズ デス・スター」下巻。
傑作。マイケル・リーヴスは『ダース・モール 闇の狩人』の作者なんですよね。あちらも読み応えのある作品でしたが、本作はそれ以上。映画第1作を補完する裏話としても完璧だし、小説単体としても素晴らしい出来です。これまで、スピンオフ作家ではとりわけジェームズ・ルシーノがお気に入りだったのですけどマイケル・リーヴスは私の中でトップに躍り出ましたね。キャラ立てが他の作家とは段違い。
デス・スターの建造も佳境に入り、いよいよその力を試す瞬間がやってきます。出力たったの4%で3000m級のスターデストロイヤーを跡形もなく消し去るその威力に砲手のテン・グラニート上等兵曹は愕然。自分はとんでもないものを扱っているのではないかという思いが強くなっていきます。
ここで拒否したところで自分は処刑されて誰かが代わりに行うだけのこと、上官の命令には従うしかないと必死に自らを説得して任務を続けるテン。さらにデスペイヤー、オルデランとふたつの惑星を破壊し、数十億人を葬り去ってしまった彼が「グリーヴァス将軍もクズだったがそれでもこれほどの人間は殺してはいない。自分は銀河史上最大の虐殺者だ」と極限まで追い詰められていく様が、読んでいてかなりキツかったです。銀河一の砲台を初めて撃った者として曾孫の代まで語り継がれるな、なんて和気藹々と話していた彼が気付いたときには歴史に名を残す殺戮者にまで堕ちている。テン自身はどこにでもいるような気の良い人間なのに、本当にどうしてこうなってしまったのかという感じです。
一方、デス・スター内のカンティーナでは、あまりにも無慈悲な大量殺戮に衝撃を受けた人々が顔を合わせていました。ノヴァ、ダンス、ミーマ、ロード、ラテュア、アトゥア、ウリー、ティーラ――彼らは反乱軍の攻撃に乗じてデス・スターから逃げる計画を企てます。脱走者8名、誰ひとり欠けずに逃げ延びてほしいのに思わぬ邪魔が入ってくる。ルークがデス・スターを破壊する瞬間がすぐそこに迫っているだけに、この逃避行が非常にスリリングです。ノヴァとロードの友情もカッコ良すぎて痺れました。
また、その過程で内部からデス・スターの弱点を探っていた図書館司書のアトゥアは囚われのプリンセス・レイアを救出しに来た侵入者を監視カメラの映像で偶然発見し、監房エリアにリフトを止める手助けをします。保安チームの隊長でもあるストームトルーパーのノヴァも耐熱ドアの向こうに逃げた侵入者のために2、3秒だけ時間を稼ぐ。『EP4』の諸々のシーンの裏にはルークたちですら知らなかった陰の協力者がいたわけです。
実はテンとノヴァのふたりは『EP4』本編にも映っていました。映画では単なるモブキャラに過ぎなかったあの砲術手やストームトルーパーのひとりひとりにもそれぞれの物語があって、彼らのささやかな抵抗が銀河の命運を分かつことになる。ヒーローみたいな特別な存在じゃなくても、誰もがいつでも主役に成り得る――これが「スター・ウォーズ」の魅力なんです。
こうなってくると軍医ウリーのクローン大戦時のエピソード「Medstar」二部作が俄然読みたくなってきます。邦訳、熱烈希望。でも活躍するのがバリス・オフィーでは日本の読者相手にはちょっと訴求力に乏しく、なかなか難しいかもしれません。
あと『フォース・アンリーシュド2』は是非読みたい。せめて既刊の邦訳小説に関連する作品を優先的に出してくれると嬉しいのですけれど。「Rebel Force」とかじゃなくて!
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