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映画『ヒトラーの贋札』

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★★★★☆
一度妥協したら全員に舐められる。これは金額の問題じゃない。
自分という存在を守るためなら、手段は選ばん

第二次世界大戦中のドイツ・ザクセンハウゼン強制収容所。ナチス・ドイツがイギリスの経済混乱を狙って企てた「ベルンハルト作戦」により、ここに送られた者たちがいた。贋作師のサリーに印刷技師のブルガー、そして美校生のコーリャなどユダヤ系の技術者たち。彼らは“完璧な贋ポンド札”を作ることを命じられる。初めこそ成功しつつあったこの贋札作り。だがやがて、彼らは自分の命を守るために使命を全うするか、正義を全うするかの究極の選択を強いられることになる……。 (2007年 ドイツ・オーストリア)


BSで放送があったので録画視聴。
 第二次大戦下ドイツのいわゆる強制収容所もの。本作がこれまでに作られてきたユダヤ人迫害系の映画と大きく異なるのは、主人公をはじめとした登場人物たちは強制収容所にいながら一定レベルの生活環境が保障されている点です。食事は毎食充分な量を与えられ、水道は自由に使い放題、ふかふかのベッドも用意されている。日曜日になればシャワーだって浴びさせて貰えるばかりか、任務成功の報奨としてレクリエーション用の卓球台までプレゼントされます。それもこれも、すべては本物同然に正確な出来の贋札作りのため。戦況を大きく左右する作戦に関わる“仕事”に従事しているだけあって、その待遇も手厚いです。

 主人公サリーも贋作師という異色の経歴の持ち主。偽造の王として名を馳せただけあって決して理想論を振りかざしたりはしません。ザクセンハウゼンに連れてこられる以前にもさんざん非道い環境を見てきた彼の信条は、今日を生き抜くことがまず大事。塀の1枚向こう側では捕虜たちが理不尽に命を散らす中、贋札作りを行うことでいまの天国のような暮らしができるのであれば選ぶ道はただひとつ。
 しかし仲間のブルガーはそのことに納得できない。自分たちの作る贋札が戦争の要であるというのなら、現在の生活を甘受することで憎きナチスを手助けし、同胞を死に追いやることに加担しているのではないか?と正義のために闘うことを説き、贋札完成への妨害工作を働きます。
 自分が生きるために他者を犠牲にすること、他者を救うために自分の命を諦めること――。ふたりは口論し、互いの意見をぶつけ合うものの、どちらが間違っているわけでもない。両者共、相手の言いたいことは痛いほどにわかっている。だからサリーは贋札を作り続けたし、ブルガーはその度に妨害を続けた。意図的なサボタージュによりチームに圧力が掛けられ、期日までに完成させないと5人殺すと言われた際、ブルガーの行為を密告しようとした仲間を止めたのは他でもないサリーです。サリー自身はあまり自分の心情を語りませんが、仲間を売るのは間違っている、妨害されたのならまた作れば良いというひたむきな行動がその想いをこれ以上なく伝えてくれます。

 己の正義を曲げて生きているのはサリーたちだけではありません。決して優しいわけでもないのに、監督されている側の捕囚たちをして公平だと言わしめる親衛隊のヘルツォーク少佐もまた、戦争の中で自分の主義主張を殺し、家族を守るために流れに身を任せた人のひとりでした。サリーに銃を突き付けられ死への恐怖からお漏らしすらしてしまう少佐ですけれど、彼の存在によって立場や善悪を越えた部分で人間としての普遍性が表現され、作品に一層の深みが出たように思います。
 ただがむしゃらに、目の前のできることをこなして生き残った戦争。それが終わって無事に平和な世の中を迎えたハズなのに残ったものは何もなく、といったただただ喪失感に苛まれるラストも印象に残ります。
 ちなみにヒトラー本人は出てこないので悪しからず。


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はろーすみす

Author:はろーすみす
シリーズものも平気で数年寝かせる積読家。本格ミステリとスター・ウォーズ小説を中心に読み漁り、新刊・話題作はあまり追っていません。

好きなミステリ作家は古野まほろ、はやみねかおる、西尾維新、霧舎巧。
ジャンル外では築山桂と小川一水。
講談社ノベルスをこよなく愛す特ヲタ。

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