2011.10/14 [Fri]
映画『インシテミル 7日間のデス・ゲーム』
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★★☆☆☆
ミステリーは虚構だから愉しいんです。本当にその通りにやらせるなんて、狂ってる。
謎の施設、暗鬼館を訪れる10人の男女。フリーター青年の結城、倒産した元会社社長の安東、専業主婦の渕、経歴不明の岩井、リストラされた中年の西野、研修医の大迫、ネイリストの若菜、WEBデザイナーの関水、元OLの祥子、大学生の真木。それぞれに大金を必要とする理由があり、時給11万2千円という常識はずれな高額のバイト料に誘われてやってきたのだ。アルバイトの内容は“7日間にわたる心理学の実験”に参加すること。ルールは極めてシンプル。ここで体験する事件を解決するだけ。発生した事件の犯人を参加者全員で推理し、多数決で犯人を決定、監獄へ投獄するというものだった。その目的は、人間心理のサンプルデータ収集。うまくいけば、わずか7日間で億万長者になれるはずだった。だが実験2日目、1人が死体となって発見され、参加者たちはパニックに陥る。 (2010年 日本)
ホリプロ創立50周年記念作品。地上波で放送があったので視聴しました。
原作既読。いまや売れっ子作家のひとり、本格ミステリ読み以外にもその名が浸透している米澤穂信の記念すべき初映像化作品になります。「7日間のデス・ゲーム」なんて、いかにも若者が食いつきそうな
ストーリーを進める上での根本となるハズのルール説明は端折りまくりであまりにも雑だし、そのせいで参加者たちを殺人行為へ誘惑する動機付けも著しく弱くなっている。“解決”に関してもまた然り。探偵報酬が用意されているにも関わらず、基本的に謎解きに対してはみんな消極的でまったくその設定が活きていません。というか“解決”という手段そのものが最初の1回を除いて殆ど忘れられた設定と化しています。
生存者に支払われる報酬も受け取ったのが結局、結城のみ(ネタバレではない)なのも杜撰すぎる。いや、主催者側は誰が生き残ったかどうかちゃんとチェックしろよ、と言わざるを得ない。どんだけ適当な脚本だよ!
演出もバンサの糞みたいなもので、サバイバルサスペンスとしての緊張感を1ミリ足りとも感じさせないダメさ加減。つかつかつかと歩いていって普通に死体が転がっているのはどうなの。もっとカメラワークで煽ったりとか、そういうB級モンスター・パニックでもやっているようなことをまるでやろうとしない。そんなもので盛り上がるわけがないじゃないですか。
関水がガードに狙われるシーンは特に有り得ない。暗鬼館の個室はどこも鍵が付いてないわけでしょ。結城が直近の一室に滑り込んだからその部屋はまあ使えないとして、それにしたってあのスピードで迫ってくるガードに対してひとつ隣の部屋に駆け込むことぐらい余裕でできたと思うんです。それが何をとち狂ったのかガードがノロノロ近付いてくるのを口をあんぐり開けて待っているだけ。どうしても生きて帰らなきゃ!とあれだけ主張していたのにそれ!?って感じです。
このガードもまたちゃちな代物なんです。とても頑丈に出来ているようには見えない造形は、もうちょっとどうにかしようがあったと思うのですけど。
そんなことだから当然の如く極限状況下の人間心理なんて描けているわけもなく。夜には見回りがいて室外にいる人間は排除すると明言されているのに、小説の続きが気になるからと下巻を取りに行くとか考えられない行動に出る人間まで出てくる始末。脚本のチェックとかしなかったのだろうか、この映画。
ミステリや謎解きの要素もほぼ無いに等しく、これが実力ある本格ミステリ作家の作品を原作にしているだなんて哀しくて涙が出てきます。米澤穂信は怒って良いよ。森博嗣の『カクレカラクリ』もそうでしたが、より多くの人の目に触れられる絶好の機会である映像化作品がどうしてこうもつまらないものばかりになるのでしょうか。そういえば、私は未見ですけど綾瀬はるかは矢野龍王『極限推理コロシアム』のドラマにも出ていたんですよね。つくづくサバミスに縁がある女優さんです。
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