2011.10/11 [Tue]
マンガ総評:渡辺静『この彼女はフィクションです。』
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★★★☆☆
葉村裕里には、10年間続けている「秘密の趣味」がある。それは、オリジナルキャラクター『ミチル』を創作すること。現実の女の子に恋をした裕里は、その趣味を捨て去る決心をするが、その時、目の前に現れたのは……!? 展開予測不能の極限恋物語開幕!! (全4巻)
先週号の『マガジン』で最終話を迎えたのでまたひとつ読むものが減ってしまった。淋しす。
この作品、ジャンルはラブコメに当たり、大きく分けて二部構成になっているのが特徴です。内容としては一種のオチモノ系で、非モテ男子の主人公が妄想し創作してきた理想の女の子が不思議な力によって実体化→好き好き大好き超愛してる。と押し掛け女房的に同居することになる典型的な展開です。与えられた“設定”通りに「ユーリ命」を宣言するミチルですが、肝心の裕里にはフーコ先輩という想い人がいて……と、まあここまではよくある話なのです。普通はこれで最後まで引っ張るところなのですけど、このマンガはそうじゃない。
なんと比較的早い段階で裕里がフーコ先輩に告白し、晴れて両想いになってしまいます。クーデレ(ていうかほぼデレ全開)なフーコ先輩のどぎまぎする様子に悶絶させられ、甘酸っぱすぎるデート回もあったりとメインヒロインそっちのけで恋愛パートも順調に進んでいくのです。なんという形式破壊!
かくして天然娘に振り回されつつもフーコ先輩と共にミチルの謎に迫ってゆく第二部へと物語は移行。終わらせ方も失って初めて自分の本当の気持ちに気付くというこれまた王道なストーリーラインを踏襲しつつ、一連の物語が実は恋愛劇ではなく、ひとりミチルを描くことで現実から逃避していた裕里が『ミチル』をフィクションであるとはっきり受け止め、他人と一緒にモノを創り上げるまでの成長劇を描いていたという構造に帰結させるところもひと味違います。ラブコメ的にも爽やかさの残る結末で大変よろしい。
最終話のラストシーンもミステリ読みには嬉しいメタ要素だったりしました。――って、いまさらながら1巻のこの表紙、伏線だったのね。
決して長期連載向きのタイプではないけれど、オーソドックスなパターンものと思わせて変化球で攻めるこの作風は嫌いじゃないです。次回作も期待しています。
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