2011.10/10 [Mon]
映画『デイブレイカー』
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★★★☆☆
西暦2019年。かつて世界中を襲った疫病により、人類の大半は不老不死のヴァンパイアに変貌、知性を備えたヴァンパイアたちは注意深く太陽光線を避けながら新たな生活秩序を構築していた。第二種に身をやつした人間はことごとく軍隊に捕獲され、ヴァンパイアへの血液供給源として飼育されていたが、地球上の全人口のうち人間の占める割合は5%まで低下、慢性的な血液不足に陥っていた。巨大製薬カンパニー、ブロムリー=マークス社に勤めるエリート研究者エドワードは、そんな血液不足問題を解消するための代用血液の開発を急いでいた。 (2008年 アメリカ・オーストラリア)
人類の大半が吸血鬼と化し、人間が絶滅の危機に瀕しているというコンセプトの下に作られたヴァンパイア映画。ヴァンパイアだって元は人間なのだから、大勢集まれば社会ができる。ゴシックで耽美なイメージを伴うことが多かった従来までのヴァンパイア像を大胆に刷新し、人間社会の延長線上にあるスタイリッシュな近未来SFにしてしまった点が本作の凄さであり、最大の特色。自動車や家には紫外線検知機能が付加され、自動で日中モードが起動されて日光を100%遮断。人工血液の開発が日夜研究され、血液工場で人間が管理される社会システム。それでいて彼らヴァンパイアたちはひと目見てヴァンパイアだとわかる特殊メイクが施されており、これがまた妖しくも格好良い。いやぁ、ヴァンパイアものにこんなアプローチの仕方があったのかと感心します。
世界観の作り込みも見事で人間が足りなければヴァンパイアを襲えば良いじゃない、とマリー・アントワネットでなくとも思い至りそうな手段をまさに現在直面する社会問題として描き、さらには吸血鬼の血を摂取すると脳機能が低下しサブサイダーなる化け物に堕ちてしまうという設定で逃げ道を完全に塞いでくる。
続発するサブサイダー問題に対処する武装警官たちも勿論、皆ヴァンパイア。そしてその原因は言うまでもなく食糧=血液の枯渇で、そこから始まる暴動とひと度本物の血液を目にした瞬間に保たれていたハズの秩序と理性が吹き飛び、本能で餌を貪る理性無き生き物へと一瞬で切り替わる場面はおぞましいほどのリアリティです。
ヴァンパイアから人間に戻る方法がわかったところで安易にハッピーエンドとはならず、むしろそこから阿鼻叫喚の地獄絵図――負のスパイラルに陥ってしまう様は、エグい一方で話の仕組みとしてはかなり良く出来ていました。
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