2011.10/02 [Sun]
マイケル・リーヴス『スター・ウォーズ ダース・モール 闇の狩人』
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★★★★☆
よしてくれ。ひとりであのシスを相手にする気か? 成功の望みは、超新星のなかの雪の玉ほどもないぞ
シス卿、ダース・シディアスはトレード・フェデレーションを陰で操り、銀河の全権をその手に握ろうと画策していた。しかし、その企みを記したホロクロンが盗まれた。ジェダイ評議会に事が露見するのを防ぐため、シディアスは弟子のダース・モールに指令を出した。「裏切り者に制裁を加え、真実を知る者すべてを抹殺せよ」コルサントのアンダーグラウンド、光も射さぬ迷路で繰り広げられる追跡劇。証人たちは、ダース・モールの必殺の刃から逃れることができるのか……。
『クローン・ウォーズ』も終わってしまってスター・ウォーズ成分が足りてない!ということで、積読本の山を崩して読んでみました。この頃はまだスピンオフ小説をハード・カバーで出せていて Amazon のレビューもこんなにたくさん……良い時代だった。これと『ルーク・スカイウォーカー伝』が100円しか違わない事実には、内容的にもその廃れ具合にも戦慄を覚えますね。買う人がいないから単価が高くなる。まさにSW小説冬の時代。
映画版の主要キャラの中でも特に人気のあるキャラクターであるダース・モールにスポットを当てた小説です。ダース・モールといえば認知度、出番の割にはセリフも少なく、正直なところ何を考えているのかまったくわからない謎な存在でした。そんなモール卿の心情が描かれる作品だというのだから、これは読まずにはいられません。
強敵に対しては敬意を持って闘うダース・モールの武士道精神や意外とドジっ子な一面も垣間見ることができてその点については予想以上に大満足。ドゥークー伯爵やアナキンのような闇堕ちジェダイとは異なり、最初からシスとして育てられたこともあって、マスターに献身的に尽くしているところも注目です。シスは裏切り裏切られの関係が常といいますが、この小説を読んだ限りではその原因は引き抜き方式にある気がします。下手に知恵を付けたジェダイを外から連れてくるから不和が生じる。ジェダイのものとは違う形ではあるけれど、シスの間でも師弟の絆(少なくとも弟子から師への)は確かに感じられました。
ダース・モールが活躍する話のため、時系列としては『EP1』の直前。終盤でジェダイ評議会からクワイ=ガンとオビ=ワンに通商連合との“交渉任務”が下され『EP1』の冒頭へと直接繋がっていきます。映画を補完する意味でも読んでおいた方が良い小説といえるでしょう。
それにしてもこの時代のスピンオフは暗いです。『偽りの仮面』もそうでしたが、他の時代に比べてとにかく重苦しい。すべてがパルパティーンの掌の上というのも理由としては大きいです。
本作にしてもタイトルこそ「ダース・モール」の名前が冠されているものの、実質的な主役を張るのはコルサントの最下層に住む情報ブローカーのローン・パヴァーンと相棒のドロイド・I-5。情報を売り買いする過程でナブー侵攻計画の全容が記録されたホロクロンを手に入れてしまったから、さあ大変。ふたりは最強の暗殺者に命を狙われるハメに陥ります。そこにたまたま居合わせたジェダイ・ナイト昇格任務に失敗してしまったばかりのパダワン、ダーシャを加えて絶体絶命のサスペンス・アクションが繰り広げられるのですが、『EP1』でジェダイ側がシスの存在を関知していない時点で“結果”がある程度推察できてしまうわけで。
彼らが魅力的であればあるほど読み進めるのが辛くなってくる。現に、このラストはすべての希望を打ち砕く容赦のない陰鬱さではあるのです。しかしながらローンの視点から見てみると幸せな結末であったのかもしれず、名誉を重んじるダース・モールの計らいによってしっとりとした余韻の残る、印象深い作品に仕上がっています。
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