2011.09/30 [Fri]
西尾維新『鬼物語』
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★★★★☆
あ、そうだ、阿良々木さん。最後にあれやりましょうよ、あれ
“誤解を解く努力をしないというのは、嘘を吐いているのと同じなんだよ” 阿良々木暦の影に棲む吸血鬼・忍野忍。彼女の記憶から呼び覚まされた、“怪異を超越する脅威”とは……!? 美しき鬼の一人語りは、時空を超えて今を呑みこむ――!!
「化物語」第9作。2nd season 第5作目です。
第忍話「しのぶタイム」ということでメインヒロインは勿論、私の推しメン(?)である金髪の吸血鬼幼女・忍野忍――と見せかけて実際には八九寺真宵、一色でした。八九寺フィーチャー回の『傾物語』が忍主体で、忍が主役の『鬼物語』が八九寺の物語。時系列的にも「まよいキョンシー」と地続きで見事に対になっています。そうはいっても今回は『傾~』の八九寺ほど忍が本筋に関わってくることもなく、事件の導入部こそ忍の昔語りであってもその後はひたすら八九寺!八九寺!!八九寺!!!
まあ阿良々木くんから見た忍は『傷物語』で、忍から見た阿良々木くんは『傾物語』で十二分に描き切っていますし。各ヒロインの内面をクローズアップする 2nd season としては順当に八九寺にお鉢を回したということなのでしょう。
「怪異そのものは一人称では語れない」という謎ルールが判明したことで今巻は久し振りに阿良々木くんの一人称だったのですけど、やっぱり彼が語り部だと「化物語」を読んでる!という感じがしますね。しかも羽川や神原、千石撫子が真面目に頑張ってくれたおかげで阿良々木くんにも危機意識が芽生えたのか、ギャグパートと本編とのバランスも良い感じ。善哉善哉。
苦々しくも確実に晴れやかな終わり方もこのシリーズらしく、数々の怪異と対峙してきた阿良々木くんでさえどうにもならない自然の摂理、定められていた残り時間と目を背けてきた事実――という、ともすれば鬱々としそうな“決断”も爽やかに〆てくれます。この物語は決してバッドエンドなんかではなくて、最高のハッピーエンドなんです。
一連の出来事を回想するかのような余韻を響かせる“きみだって、知ってたはずの嘘だった。”のキャッチコピーも胸にくるものがありました。
予告に反して結局なんとなくしか明かされなかった学習塾焼失事件の真相や「おうぎデスティニー」みたいな作品で無限に続けていけそうな雰囲気ではあるものの、本作の結末を見るにこの物語も 2nd season ですっぱり終わらせてあげた方が綺麗に締まるのかな、なんて思ったりします。
――てか、ここまで来てもキャラ設定が不明な扇ちゃんはいったい何なのだろう。さすがに未来人ではなさそうなので『刀語』の否定姫や四季崎記紀のような未来視のできる人間か、はたまたアカシックレコードにアクセスできる運命の守り人的な何かか。今回の雑談ででてきた「アニメ版は平行世界」発言が実は伏線になっていて、『傾物語』の阿良々木くん&忍と同じで失敗した時間軸に乗り込んできた別の時間軸の人間……とか?
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