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300冊の積読本もなんのその、本や映画の感想などをつらつらと述べてみたり。

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西尾維新『囮物語』

囮物語 (講談社BOX)囮物語 (講談社BOX)
西尾 維新 VOFAN

講談社 2011-06-29
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★★★★☆
私が受けている感想を率直に言わせてもらえるなら、そうだね
絶対に叶わない恋愛を、安心してやっているって感じなのかな
誰かを好きだったら、他の誰かを好きにならずに済むもんねえ

“――嘘つき。神様の癖に” かつて蛇に巻き憑かれた少女・千石撫子。阿良々木暦に想いを寄せつづける彼女の前に現れた真っ白な“使者”の正体とは……? “物語”は最終章へと、うねり、絡まり、進化する――。


「化物語」第8作。2nd season 第4作。
 第乱話「なでこメドゥーサ」。いや、これはまた予想外な展開でした。阿良々木くんから見たヒロインたちと実際の彼女たちとのギャップというのが 2nd season のテーマになっていて『猫物語(白)』では羽川の、『花物語』では神原の一人称で書かれてきたわけですが、本作『囮物語』を叩き付けられるとそれらが予行演習に過ぎなかったのではないか、とすら思えてくるほどです。

 ツンドラ文房具娘にツインテ幽霊少女、ちょいエロで元気な後輩と実の兄のように慕ってくる妹の友達、完全無欠の委員長、金髪の吸血鬼幼女。「化物語」に登場するヒロインたちは多くのアニメ作品やマンガ、ライトノベルでそうであるようにある程度のテンプレさといわゆる「属性」を備え、それぞれに特徴的な――デフォルメ染みたキャラっぽさが設定されています。そもそも西尾維新の小説自体がそういったキャラをウリにしており、特に本シリーズは掛け合い重視ということもあってその傾向は顕著です。
 その作風を逆手に取って突き崩してきたのがこの作品。キャラクターがそんな性格であるのには“そうである”ための理由が必ず存在する。当然といえば当然なのですけど、オタ向け作品ではそこらへんは様式美としてスルーされることが殆どです。ツンデレはツンデレ、無口っ娘は無口っ娘なのです。何故なら、そういう仕様でそういうふうにできているのだから。

 小学生の頃から暦お兄ちゃんのことを想い続けてきたか弱く内気で可愛らしい少女・千石撫子。今回、西尾維新は月火を使ってそのキャラクター性にメスを入れてきます。小学生のときに一緒に遊んだだけの友達のお兄ちゃんを、6年もの間逢っていない人のことをずっと好きでい続けるなんて普通に考えておかしいんじゃないの、と。「お兄ちゃん」と呼んでいる時点で恋愛対象としては捉えていなんじゃないの、と。そもそも、千石撫子のその感情は本当に恋なのだろうか、と言ってしまう。
 ある意味、ハーレムものへのアンチテーゼですよね。リアルではまずありえない二次元キャラ(活字を二次元に分類して良いのかは謎ですが)ならではの基本設定、暗黙の了解としてまかり通ってきた部分に敢えて踏み込んでくる。既存のアニメだと『LOVE♡LOVE?』なんかが近いかもしれない。
 ただ、肝心の千石撫子の方はとことん無自覚でやってきたし、それを指摘することが彼女の心を抉るどころか壊れるまで痛めつけることになる。ここらへんは読んでいてかなりキツかったです。しかしながら、そこまで描いてしまうのが「化物語」という作品の凄さ。キャラクターが爆発的な人気を誇る作品で、よくぞ恐れずにこれに挑んでくれた。やっぱり西尾維新は自己の立場に自覚的なのだと改めて感じました。

 ここまでやっておいて次巻が学習塾炎上事件の『鬼物語』とは。それこそとんだ蛇の生殺し状態です。時系列的にもっと後に当たる『花物語』があるからそこまで非道い結末にはならないとは思うのですが、この事件がどういった決着をみるのか楽しみです。そして勿論、3rd season も。
 とりあえず「恋愛サーキュレーション」を聴いて超可愛い!とか言っていた人は全反省ですね(余談ながら「恋愛サーキュレーション」ってROCOの曲に似てますよね? 最初に聴いたとき「○×アーメン」かと)



ちなみに今後の西尾維新の予定は
今月 『鬼物語』発売
12月 『恋物語』発売
年内 『VS JOJO』発売

年が変わって2012年
1月 アニメ『偽物語』放送開始(西尾維新アニメプロジェクト第4弾)
4月 アニメ『めだかボックス』放送開始(分割2クール放送)
10月 アニメ『めだかボックス(二期)』放送開始
年内 劇場版『傷物語』公開(西尾維新アニメプロジェクト第3弾)

来年やばす!
ほぼ1年中、西尾維新じゃん!!
そして『偽物語』とか結構クソだったけどアニメ化とかしちゃうのね。
『めだか~』は一期で『十三組の十三人』を片付けて二期で球磨川編って感じかな。
西尾ファンとして気の抜けない日々が――って、その前にさすがにそろそろ『化物語』のアニメ見なくちゃなのですが。


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プロフィール

はろーすみす

Author:はろーすみす
シリーズものも平気で数年寝かせる積読家。本格ミステリとスター・ウォーズ小説を中心に読み漁り、新刊・話題作はあまり追っていません。

好きなミステリ作家は古野まほろ、はやみねかおる、西尾維新、霧舎巧。
ジャンル外では築山桂と小川一水。
講談社ノベルスをこよなく愛す特ヲタ。

当ブログはリンクフリーです。
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2014年に読んだ小説の       (暫定)ベスト5はこれ!!

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2012年に読んだ小説の        ベスト5はこれ!!

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1.トリプルプレイ助悪郎(2007年刊)   2.名探偵に薔薇を(1998年刊)             3.化物語(2006年刊)          4.時砂の王(2007年刊)                  5.天帝の愛でたまう孤島(2007年)

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