2011.09/25 [Sun]
映画『アンストッパブル』
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★★★★☆
残念です。この仕事が好きになり始めたのに
ペンシルバニア州の操車場。ベテラン機関士のフランク・バーンズと若い車掌のウィル・コルソンが初めて顔を合わせる。しかし、年齢も家庭環境も異なる2人の間には大きな溝があり、ぎこちない雰囲気のまま機関車1206号へと乗り込むことに。やがて、2人の耳に貨物列車777号がトラブルを起こしたという情報が飛び込んでくる。運転士の操作ミスにより、無人のままの777号が暴走を始めたというのだ。しかも、777号には大量の化学物質が搭載されていることが判明。操作不能に陥った777号は、一つの街を壊滅させるだけの威力を持った巨大ミサイルも同然だった。様々な手段を講じて777号を停止させようとする鉄道会社。だが、そのいずれもがことごとく失敗してしまう。 (2010年 アメリカ)
危険物資を積んだ暴走列車を街に突っ込む前に止める!――と、まあ言ってしまえばそれだけの映画なのですけど、兎にも角にも大迫力で見応えのある作品に仕上がっています。スマートな美しさとは無縁の暴走する貨物車は剥げた塗料と鉄と錆が醸し出す使い込まれた様子がその無骨さを強調し、ただでさえ圧倒的な存在感を誇る車体をより巨大に、より重厚に見せる。
最近の映画でよく目にするドキュメンタリータッチにニュース映像を挿入する手法もかなり効果的です。777の現在位置・住民の避難状況等の基本情報は当然のこととして、言葉だけでは伝わり難い作戦の概要を作中のニュースとしてCGモデルを用いてシュミレーション解説してくれるのです。これが非常に呑み込みやすい。疾走する鉄道と連動するかのようにテンポの速い物語が展開される中では、観ている側に複雑な計画を咀嚼している時間など与えられません。そんなことをしているうちに列車はすぐに作戦ポイントまで到達しています。それが、ニュースを使うことで一瞬で、ぱっと見てぱっと把握できる。百聞は一見に如かずです。スピード感を殺さず、尚且つ観客が取り残されないように配慮されているわけです。
しかも、劇中劇の“生放送”が擬似的なリアルタイム実況を演出し、ニュースを観ている街の人々同様にこちらも彼らの作戦の成否をその場で見守っている感覚に陥ります。その臨場感は他の作品の比ではないです。
短い作品ながら、フランクとウィルが列車を止めることに全力を注ぐ理由が納得できるだけの材料を持って描かれているのも好印象。お互いにあまり好ましく思っていなかったふたりが徐々に打ち解けていくストーリーも王道ではあるのですが、中盤にてその関係性を変化させるとあるひっくり返しがあったのも気持ちが良いです。人間の感情としても充分に理解できるし、伏線の張り方も自然で極まっていました。
エンドロールと共に登場人物のその後が語られるのも良いですね。特に、列車を暴走させた張本人のおデブさんは本編中でまったく反省の色を見せていなかっただけに溜飲が下がる思いです。
ハリウッドにありがちな興醒めなやりすぎアクションは皆無。ふたりの男が鉄道に携わる者としてのプライドと家族への想いを懸けて限りなく不可能な“仕事”に全力を持って立ち向かう。地に足の着いた濃密な100分間を存分に堪能しました。
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