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映画『ミスト』

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フランク・ダラボン

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★★★★☆
僕を怪物に殺させないで。絶対に、何があっても。
ある夜突然、メイン州西部全域が未曾有の激しい雷雨に見舞われる。嵐におびえる住民たち。翌日、5歳の息子と隣人の弁護士ノートンと共にスーパーマーケットに買出しに出掛けたデヴィッドがレジの長い行列に並んでいると、外で軍人が動き回りサイレンが鳴る。さらにすると鼻血を出した男がマーケットに駆け込んできて、「霧の中に何かいる!」と叫んだ。途端、マーケットが霧に包まれると突然大きな衝撃音が響き、壁や天井にひび割れが起きる。外に出ないで様子を見ることに決めた彼らだったが、息子のビリーが発熱したためにデヴィッドは毛布を取りに倉庫に入ることに。そこで待っていたのは不気味な物音と外から侵入しようとする謎の生物の触手だった。 (2008年 アメリカ)


少し前に地上波放送があったものを録画視聴。
 この映画、名前は聞いたことがあったのですが詳しい内容までは知らず、あらすじを読んでどうやらモンスター・パニックらしいと知って観てみたのですけれど、完全に舐めていました。まさか、ここまで鬱な映画だったなんて……。
 たぶんいままでの人生で観た映画の中でもトップクラスに鬱――いや、そんな生易しいものですらなくて。最も鬱な映画でした。観終わった瞬間、うわあああああああ!!と叫びたくなること請け合い。いまから観ようという猛者は覚悟してください。そしてなるべく前情報を断っての鑑賞を推奨しておきます。

(そんなわけで、久しぶりに「以下、ネタバレ」)


 本作は『ブラインドネス』と同じくパニック映画のギミックを用いて極限状況下の人間心理を抉った映画です。とはいっても、あちらのように原因を不明確にしたままという割り切った作風でもなく、あくまでもモンスター・パニックの土壌に載せて限界ギリギリの人々の姿を描いています。スーパーに閉じ込められてしまった人々が危険を目の前にして徐々に理性を失い、パニックに陥っていく過程が真に迫って描写されるに留まらず、誰が生き残って誰が死ぬのか?というどきどき感、ついでにいえば結構なスプラッターも盛り込まれていてモンスター映画としての味わいもまったくもって損なわれていません。
 客たちは襲い来る死の恐怖から精神の安らぎを求めて神の助けを乞い、神の声が聞こえると自称する女性を絶対的な存在として崇めるようになる。そうやって形成されていった集団心理がやがて仮想敵を生み出し、魔女裁判が行われる流れは悪夢としか言いようがないです。しかも、この女性リーダーの店から出たら殺される、絶対に出るなという命令は、最初の段階で主人公が店内の人々に対して指示したことであり、何らおかしなことは述べていない。客観的に見ればデヴィッドと彼の仲間たちが不可解で非論理的な言動を起こしていることになってしまう構図が見事です。

 そして問題のラスト。あそこで何も子供まで殺さなくてもといった意見もありますが、アレは息子との約束を守ったからこそなのです。すべての希望を失って絶望に打ちひしがれた彼が、せめて自分にできる最後のことをと選んだ道があの決断です。あの状況ではそれが最良で残された最後の救いでもあった。それが一転、あんな結末です。
 共に逃げ延びた仲間たちを自らの手であの世へと送り出し、ただひとり生き残った彼が見た世界。あと1分でも遅ければすべてがハッピーエンドで済んだのに。絶望を乗り越えた末に待つさらなる絶望。どこまで重い十字架を背負って彼に生きろというのか。
 映画はそこで終わりますが、ここで改めて“神への祈り”が生きてくるわけです。この罪から逃れるための唯一の方法、それが宗教なのです。仲間を、息子を、助かったハズの命を許されざる形で散らしてしまった彼が救いを求める先が神の御心であることは想像に難くないでしょう。さんざん邪魔され、人間の最も惨い部分を引き出し、喰い止めることができなかった「宗教」を、今度は彼自身が安息の場所として求め、浸かってしまう。そう思うと、いっそう重々しく感じられます。


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はろーすみす

Author:はろーすみす
シリーズものも平気で数年寝かせる積読家。本格ミステリとスター・ウォーズ小説を中心に読み漁り、新刊・話題作はあまり追っていません。

好きなミステリ作家は古野まほろ、はやみねかおる、西尾維新、霧舎巧。
ジャンル外では築山桂と小川一水。
講談社ノベルスをこよなく愛す特ヲタ。

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