2011.09/14 [Wed]
高田崇史『毒草師 白蛇の洗礼』
![]() | 毒草師 白蛇の洗礼 (講談社ノベルス) 高田崇史 講談社 2011-06-06 売り上げランキング : 27155 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
★★★★☆
西田君の場合は、巻き込まれたというよりも、巻き込まれに行ったというのが正解じゃないかね。
裏千家教授・大澤信郎の次男が濃茶席で毒殺された。取材を始めた雑誌編集者の西田は、容疑者の神凪百合に淡い恋心を抱く。相次ぐ毒殺事件の真相を突き止めようと、西田は毒に精通する変人、自称“毒草師”の御名形史紋を頼ることに。大澤家がひた隠す秘密を、御名形は「千利休=キリシタン」説とともに解き明かす。
「毒草師」第2作。
目玉である千利休=キリシタン説はムリヤリ絡ませた感があって本筋とはまったく関係のない雑談になってしまっている気がしなくもないですが、まあそれは措いといて。今回の謎は不可能状況での毒殺事件。衆人環視、全員で一杯のお茶を飲みまわす濃茶の席において犯人はいつ、どのタイミングでどうやって毒を盛ったのかが問題となってきます。これが、明かされる真相はかなりぶっ飛んだものとなっていて、人によって受け入れられるかどうかで分かれるのは確かでしょう。本書を普通のミステリとして読んでいて、自らの手で犯人とトリックを突き止めてやる!と意気込んでいた読者が怒り狂っても仕方ないというか。その気持ちは理解できないこともありません。
しかし自分的には全然アリですね。むしろ好みなくらいでした。ミステリのトリックは驚かせてなんぼですよ。本作は意外性という面では抜きん出たインパクトを放っており、誰も考えつかないだろう、というような真相をぶちかましてくれます。
とはいえ。まったく予想外のところから答えが出てきたのかといえば、実はそんなこともなくて。ヒロインである百合の抱える秘密については大方の読者が充分に想像できる範囲内――いや、どちらかといえば気付かない人の方が少ないんじゃないでしょうか。そうなると「AがあるのならBもまた然り」といった論法で、冷静になって突き詰めてみると発想的にはそこまで飛躍していないことがわかるハズです。別途で蘊蓄の中にもきちんと伏線が張ってあるし、これは見抜けなくて悔しがっても良いレベルのフェアプレイだと思います。
御名形と毒草師のルーツが明かされたり、不穏な空気を残して終わったりとシリーズ化を睨んだような展開になってきましたが、2011年現在続編は出ず終い。「カンナ」に御名形とあの人が一緒に登場していることから推察するにまだまだ続くとは思うのですけど、「QED」「カンナ」の両シリーズが片付いたら出るのかしら。「毒草師」は「QED」よりも軽い気持ちで読み始められるのが結構気に入っているので是非とも講談社ノベルスから出してほしいものです。
スポンサーサイト
Comment
Comment_form