積読本は積読け!!

300冊の積読本もなんのその、本や映画の感想などをつらつらと述べてみたり。

Entries

西尾維新『猫物語(白)』

猫物語 (白) (講談社BOX)猫物語 (白) (講談社BOX)
西尾 維新 VOFAN

講談社 2010-10-27
売り上げランキング : 3389

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

★★★★☆
嫌いなものがあるっていうのは、好きなものがあるのと同じくらい大切なことじゃない
――それなのに、あなたは何でもかんでも受け入れちゃうじゃない。
私のこともそうかもしれないし、阿良々木くんのこともそうなのかもしれない、なんて思うんだけど

君がため、産み落とされたバケモノだ。完全無欠の委員長、羽川翼は二学期の初日、一頭の虎に、睨まれた――。それは空しい独白で、届く宛のない告白……。<物語>シリーズは今、予測不能の新章に突入する!


「化物語」第5作。
 2nd season の1作目。本作最大の特徴は、語り部が従来の阿良々木くんから事件の当事者である羽川へと替わっていることでしょう。この試みはすごく良い。やはりキャラクターはそれぞれに他人には関知し得ない自分だけの物語を持っていないとね。
 ここまで阿良々木くんのフィルターでしか見えなかった世界が羽川視点になることで別のものを映し出し、ひたぎと羽川の絡み、ふたりの関係性が垣間見られたのもこの手法をとった意義でしょう。内容そのものは羽川のごくごく個人的な物語でありながら、彼女の眼を通して戦場ヶ原ひたぎの成長を存分に実感できる話にもなっているのが上手いです。
 おまけに最近グダグダ気味な阿良々木くんの語りとは違って、おふざけも控え目で全体に締まっているため、かなり読みやすい。ギャグパートと本編のバランスの悪さが改善されているのも嬉しい副産物でした。

 完璧超人、聖人君子と評される羽川翼が抱える重たく昏い事情については『化物語(下)』や前作『猫物語(黒)』でも描かれ、これまではだからこそいまの羽川があると考えていました。でも本当はそんな綺麗事で済まされること自体がおかしくて。あんな気持ちの悪い環境の中にいた人間が、捻くれもせずに誰よりもまっすぐな性格に育っているなんて事態が既に異常だったのです。それこそが羽川翼の闇。『猫物語(白)』は羽川がこの闇の権化である虎の怪異と対峙し、自分の内面と向き合う物語です。

 苛虎誕生の決定打となる出来事に関する伏線は豪胆ながら読者にまったく悟らせない絶妙さがあり称賛したいくらいなのですが、一方で同じ部分にややアンフェアに感じる描写があるのがミステリとして判断に困るところ。当該箇所を何度読んでも明らかに引っ掛かる書き方がされています。そこさえちゃんとしていればかなりの秀作に成り得たのに勿体ない。
 内容的にはこのくらいシリアスな方が好みというのは勿論のこと、「化物語」は西尾維新の著作の中でも最もシリアス向きな作品だと思っているので容赦なく心の奥底まで抉り抜いて、キャラクターを存分に迷い悩ませてやってほしい。2nd season 、大いに期待しています。


スポンサーサイト

Comment

Comment_form

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

ご案内

プロフィール

はろーすみす

Author:はろーすみす
シリーズものも平気で数年寝かせる積読家。本格ミステリとスター・ウォーズ小説を中心に読み漁り、新刊・話題作はあまり追っていません。

好きなミステリ作家は古野まほろ、はやみねかおる、西尾維新、霧舎巧。
ジャンル外では築山桂と小川一水。
講談社ノベルスをこよなく愛す特ヲタ。

当ブログはリンクフリーです。
お気軽にどうぞ。

カレンダー

09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

ただいまの積読本

現在:456冊                        目指すは未踏の500冊! 最新の15冊を表示。                 冊数をクリックするとすべての積読本を見られます。

ブログ内検索

作家別作品アーカイブ

過去の読書記録はこちらから。 作家名が五十音順に、それぞれシリーズごとに見られます。

評価について

★☆☆☆☆ 破り捨てたい衝動に ★★☆☆☆ うーん。これはびみょ(ry       ★★★☆☆ 普通に面白いです ★★★★☆ 一読の価値アリ ★★★★★ 殿堂入り                ★×4以上は自信を持ってオススメ  ★×5はとりあえず読んでほしい傑作

2014年のベスト5

2014年に読んだ小説の       (暫定)ベスト5はこれ!!

2012年のベスト5

2012年に読んだ小説の        ベスト5はこれ!!

2011年のベスト5

2011年に読んだ小説の          ベスト5はこれ!!

1.トリプルプレイ助悪郎(2007年刊)   2.名探偵に薔薇を(1998年刊)             3.化物語(2006年刊)          4.時砂の王(2007年刊)                  5.天帝の愛でたまう孤島(2007年)

最近の記事

月別アーカイブ

ブロとも申請フォーム

アソシエイト

アクセス解析