2011.08/14 [Sun]
西尾維新『猫物語(黒)』
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★★★☆☆
好きかもしれない、イコール好きでいいじゃん。
好きかなーって思って。
好きかなーって感じて。
好きだってわかる。
ずっと、一緒にいたいって思う。
そんな感じだろう。
ついに語られる、ゴールデンウィークの真実。完全無欠の委員長、羽川翼。阿良々木暦の命の恩人である彼女はゴールデンウィーク初日、一匹の猫に、魅せられた―。それは、誰かに禁じられた遊び……人が獣に至る物語。封印された“悪夢の九日間”は、今その姿をあらわにする! 知らぬまに、落ちているのが初恋だ。
「化物語」第4作。
ここまで唯一直接描かれていなかったゴールデンウィークの事件「つばさファミリー」を所収。時系列としては『傷物語』の次にあたり阿良々木暦2番目の事件にあたります。実際のところ、本作で語られる内容はその原因から事件内容、解決の仕方まで、既刊にすべて書かれているので物語として読者の予想を裏切るような展開はありません。そういう意味では本当にアニメ大ヒット御礼のボーナストラック的な作品です。それでも楽しく読ませてくれるのだから、さすがは西尾維新。
やりたい放題好き勝手な作風は前作よりもさらに輪を掛けて酷いことになっていて冒頭からアニメ版の話をし始めるわ、時系列設定を意図的にうっちゃって過去作で触れられた事項やこの時点ではまだ出逢ってもいないキャラのことを匂わせるわ、挙句の果てには円谷プロのエイプリルフールでネタにされたことすら小説内でギャグにするわでもうメタもメタメタ。めっちゃくちゃ。小説ってここまで自由にやっちゃって良いんだ、と変な感心をしてしまうくらい悪ノリ具合です。いや、もうなんか……凄いよね。
キスショットの残滓(まだ忍ではない)がミスドを食べたときの反応が最高に笑える。どんなコメディだ。
ストーリー上の読みどころはやはり『傷物語』で浮上した“羽川翼が正ヒロインじゃないの?”問題。後に、ボーイ・ミーツ・ガールの定石に逆らうかのようにぽっと出ヒロイン戦場ヶ原ひたぎと付き合うことになる阿良々木くん。その是非――というわけではないけれど、阿良々木くんがどうして羽川を選ばなかったのか、羽川との間に積み上げたフラグがどういった着地点を見出したのか、われわれ読者が気になっていたポイントにひとつの決着がつけられます。
ここまでシリーズを通しで読んできて、これから 2nd season も読んでいこうという人にとっては最も重要な一冊かもしれません。
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