2011.08/02 [Tue]
映画『サンシャイン2057』
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★★★☆☆
太陽を目の前にしたら人間などただの塵だ。塵にすぎない。
われわれはその塵に戻るのだ。
50年後の未来。地球上の全ての生命の源である太陽の活動が終焉を迎えようとしていた。人類に残された最後の望みは、太陽を再生させるための核爆弾を積んだ宇宙船“イカロス2号”。そこには船長のカネダをはじめ、男女8人のエキスパートが乗り込み、命がけのミッションに挑もうとしていた。太陽からの強大な熱を巨大なシールドで回避しながら慎重に太陽へと接近していくイカロス2号。やがて一行は、7年前に同じミッションに向かったまま消息を絶ったイカロス1号の救難信号を受信するが……。 (2007年 イギリス)
結構前に地上波で観たのですが、まだレビューを載せていなかったので。
ひと言でいってしまうと感性で観る映画です。題材としてはSFを扱いながら、話の内容はとても観念的で哲学的。ただのSFとして観ると説明のつかない事項もややありながら、思想世界に踏み込んだような作風によって逆に許されている部分もある。時折サブリミナルで挿入されるイカロス2号のクルー写真なんかが最たるもので、本作は登場人物たちに感情移入する物語というよりも“観察者”に向けてつくられた物語になっています。観客にテーマを魅せるための手段としてSF映画という体裁をとっているけれど、そこで描かれることには必ずしも合理性は存在しない。なぜなら、そんなものには何の意味がないから。理屈や整合性はとりあえず置いておいて「考えるな!感じろ!」すらも通り越し、「感じろ!感じるんだ!」という類の作品です。
それだけにフィーリングを喚起させることには充分すぎるほど拘っています。迫力の映像美と壮麗な音楽が紡ぐ世界観は他のどの映画とも違う唯一無二のものがあり、登場人物のみならず見ているこちら側までも呑んでしまう。
直視は元より、宇宙船でさえ油断すればその身を灼かれてしまう太陽へと向かう任務は、いくら帰還プランが用意されているといっても命を落とすであろうことはほぼ確定的です。それでも尚、たとえ自分の命を奪う元凶であってもその偉大さと美しさに魅入られる。悲劇に消えたイカロス1号のクルー、そして現在進行形で任務を遂行のイカロス2号のクルーが、わが身を滅ぼす元凶たる太陽に惹かれるその理由がわからなくもないのです。そう思わせるところまで観客の心を引っ張り上げるのは、なかなか簡単なことではないでしょう。
人は太陽に何を見るのか? 結局そこに答えはなく、太陽は何も示してはくれない。すべては見る者の判断に委ねられています。この作品も同様に、後半の現実か空想かを判断し兼ねるサスペンス展開は様々に解釈できます。でもその判断はやっぱり観ているわれわれ次第で。確かな答えはありません。
何を感じても良いし、どんな価値を見出しても間違いではない。そのオーバーラップに挑んだのが本作なんじゃないかと思います。
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