2011.07/31 [Sun]
映画『君が踊る、夏』
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★★★☆☆
けど、さくら踊りたい。
最後の夏になっても良い、死んでもええきん。さくら、踊りたいんや。
カメラマンを目指し、若手カリスマカメラマン・高木四郎のアシスタントとして働く寺本新平は、日々の仕事に忙殺されていく中、次第に自信を失っていた。そんなある日、突然母・敏江から入院の知らせを受けた新平は、5年ぶりに故郷・高知へ戻る。敏江が入院する病院で、新平は高校時代の恋人・野上香織の妹であり、「一緒によさこい踊ろうな」と約束していた幼い少女・さくらと出会う。さくらは難病を患っており、この年の夏が最期になるかもしれないと宣告されていた。そんな中、さくらはどうしてもよさこい祭りで踊りたいと父・健一郎と香織に懇願する。5年前に、新平と一緒に踊ろうと約束したことをさくらは今も鮮明に覚えていたのだった。 (2010年 日本)
少し前に地上波でやっていたものを録画視聴。
普段であればこういった実話系難病もの映画はスルーするところですが、この作品は劇場予告で溝端くんが四万十の水を切って旗を振る練習シーンに圧倒され、ひと目惚れしたということもあって観てみました。タイトルにも惹かれたし。
観てみて意外だったのは、本作はさくらの生きるか死ぬかで泣かせようという趣向の作品ではないんですね。さくらの病気はあくまでも新平がよさこいに復帰するためのキッカケに過ぎず、体調こそ崩せどそういったところであざとく泣かせようという意図はまるでなし。最初から最後まで一貫して、よさこいを通して迷いを吹っ切る新平の成長劇となっています。
そこに元恋人・香織とのピュアすぎる恋愛が絡められ、どちらかといえば恋愛映画に近いです。香織役の木南さんは取り立てて美人でも特段可愛いわけでもないのに、一挙手一投足がいちいち胸きゅん要素を押さえてくる。これは少女マンガ風実写映画といっても良いくらいでしょう。それも最近の刃物のような男子が出てくる肉体関係を余裕で描いちゃうような少コミ的ものではなく、プリティでキュアキュアな90年代~2000年代前半のりぼん的少女マンガです。甘酸っぱいことこの上ない。
ただこのふたりがあまりにも言葉足らずなんだよなぁ。新平との東京行きが迫った矢先、妹が難病に侵されていることを知り、香織は地元に残ることを決意します。しかし新平にすべてを話せばきっと彼は夢よりも自分を選ぶから、本当のことは言わないままで。突然の東京行きキャンセルを聞かされた新平は彼女の様子が明らかにおかしいのにその理由まで考えようとはせず、泣いている彼女と親友が一緒にいるのを目撃してろくに事情を探ることなく喧嘩別れ。その後5年間も連絡をとらず終い、恨みっぱなしだったり。落ち込むのは勝手だけど、もうちょっと方策があるだろと言いたくなります。
「いちむじん」復活に奔走する香織にしても、最初はチームメイトや代表にさくらのことを話そうとはしない。そのあたりが観ていてかなり違和感を覚える部分で、既定のシナリオを進めるためにキャラクターをムリヤリ動かしているように感じました。
物語の展開にしても同様です。新平が5年前に撮った写真がとんとん拍子でコンクールの優秀賞に選ばれる不自然さ、大賞発表の日時がよさこい祭当日にブッキングしてしまうあるある展開。予定調和なご都合主義がそこかしこに見え隠れしていて“作りすぎ”に思えるのです。
とはいえ、新平の選択については間違いなくこちらが正解。このラストを夢を諦めた、チャンスをふいにしたと受け取るのは早計でしょう。5年前の写真の出来はともかく、それは意図して撮られたものではないし、その後彼自身の中でも「写真とは何なのか」を理解しないままできてしまっている。それなのにそんな写真で受賞をした日には必ず潰れます。断言して良いです。
何よりもあそこで授賞式を選ぶことは、ノミネートされた写真に込められている想いを裏切る行為そのものです。それは写真家として最もやってはいけないことのハズ。カメラマンとして写真と真摯に向き合うためのステップとして、新平はこの絶好の機会を自らかなぐり捨てなければならなかった。このラストはそういうことでしょう。
他にも『ウルトラマンメビウス』初期からは想像もつかないほど演技が上手くなった五十嵐くんも方言はまだ早かったかという残念さとか、DAIGOの持ちネタ「WISH」を作品の中でまで言わせた奴出てこいとか、むしろDAIGOの演技をどうにか(ry とか、無駄なカメオ出演で豪華キャストアピールしなくても良いから!とか、キャスト面で言いたいこともたくさんありますが、激甘な恋愛模様にやられてしまったのでまあ良しということで。
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