2011.07/18 [Mon]
天野ミチヒロ『世界UMA総進撃』
![]() | 世界UMA総進撃 (三才ムック vol.320) 天野ミチヒロ 三才ブックス 2010-08-28 売り上げランキング : 546487 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
★★★★☆
UMAとは、永遠に怪獣である!
ネッシー・ツチノコ・イエティ……地球は《本物の怪獣》で溢れている! ネス湖の怪獣=ネッシー、南米の吸血生物=チュパカブラ、南米のネッシー=ナウエリト、巨大な翼を持つ悪魔=モスマンなどなど、世界各地で目撃された未確認生物を本気で調査。未確認生物は実在するのか。それとも絶滅してしまったのか。ただの根も葉もない噂話なのか。未確認生物《総勢200体》の真実に迫る!
今回のUMA本は天野ミチヒロ『世界UMA総進撃』です。媒体が500円程度のぺらいムックであり、タイトルやイラスト、“UMA”にわざとらしく“ゆうま”なんてルビを振ってしまうところがいかにもB級テイストですが、よくよく読んでみるとこれが意図的に演出されたものだとわかります。
というのも本書は著者が小さい頃に実際に読んでいた児童誌のUMA特集記事を再現したような作りになっているんですね。UMAのことを“怪獣”と称する理由もそこにあり、若い世代からはぴんときませんが、かつてはネッシーやらビッグフット的なモンスターっぽい存在以外にも、ニホンオオカミのような絶滅種もまとめて未知の生物を“怪獣”と呼んでいたらしいのです。古い本を当たっているとときどき怪獣という表記を見掛けるのも事実で、私もその度に首を捻ってきました。怪獣といわれるとどうしても特撮方面を連想してしまい、作り物のイメージ=嘘くささを感じてしまうからです。
けれどなるほど、そういう経緯があったとは。UMAファン歴10年ほどにしてようやく謎が解けました。
本書も多数のUMA本の例に漏れず1ページに1種類ずつUMAを紹介していく図鑑形式をとっていますが、実は目を見張るべきところは巻末の総論におけるこういったUMAに対するスタンスの部分です。UMA研究そのものというよりはUMA研究の変遷とUMA本を取り巻く業界の現状、そして著者の意見が興味深い。
昨今のUMA関連書籍ではUMAでもなんでもない珍しい生物が紙幅をとって掲載されていることや、カッパのような妖怪(種としてのカッパなのであえて片仮名表記にしました)がUMAとして取り上げられていることへの疑問、目撃情報が残る絶滅種もUMAにカウントされるのか? お行儀の良いUMA本とは異なり、著者のキャラが全面に出されたムックだからこそ語れることがある。
妖怪についてもそれなりに嗜んでいる身としては“UMAと妖怪がごっちゃになってる問題”には憤りすら覚えていました。新種生物の候補であるUMAと概念上の空想物である妖怪というまったく真逆の立ち位置にいるものを併せて語るのは非常にキケンです。下手したら河童のミイラや鬼のミイラ、人魚のミイラといった紛い物に引っ張られてUMAすべてが否定されてしまう恐れがあります。外科医の写真やロジャー・パターソン・フィルムでわれわれはさんざんその苦汁を嘗めてきただろうに!
そんなUMA業界に対する怒りと共感を味わえる貴重な一冊です。裏事情の暴露という面でいままであまり見掛けなかった珍しいタイプ。
スポンサーサイト
Comment
Comment_form