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300冊の積読本もなんのその、本や映画の感想などをつらつらと述べてみたり。

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アラン・ディーン・フォスター『スター・トレック』

スター・トレック (角川文庫)スター・トレック (角川文庫)
アラン・ディーン・フォスター 北原 尚彦

角川グループパブリッシング 2009-05-23
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★★★★☆
わたしはこれまでずっと、そしていつまでも、君の友なのだ
宇宙の彼方に突如出現した巨大艦ナラダ。艦長のネロは惑星連邦の艦船を殲滅し、さらに恐ろしい計画を進めていた。理由は誰にもわからない。カークとスポック――かたやアイオワの農場で育った元不良少年と、かたや感情を抑制し論理にのっとって生きる青年――は共にエンタープライズに乗り込み、謎の巨大艦を追う。宇宙の運命は、正反対の個性を持つこの2人の若き男たちに委ねられた。新たなる伝説が幕を開ける――。


ST11こと映画「スター・トレック」のノベライズ。
あと1日?待てん!
というわけで、公開日前になんとか読み終えることができました。
 
 舞台は23世紀。カーク船長やスポックをはじめとした初代エンタープライズのクルーの若い頃の物語とアナウンスされてきた今回の映画。監督がJ.J.エイブラムスだったり、今までのシリーズとの矛盾点が相当あったり(カークが車で爆走、エンタープライズが地上で建設、クリストファー・パイクとカーク船長に面識が……、など)と、そんなことから当初は今回の映画は一般人向けの――いま流行のまったくのリメイク作品なんじゃないかと言われてきました。それが、オリジナルでスポック役のニモイがまるまんまスポックとして登場するという予告編が公開され、状況は変わってきました。
 そして、ついにその新作がベールを脱いだわけです。

(以下、ネタバレ。映画をまっさらブルージーンズな感じで楽しみたい方もご遠慮ください)



 結論からいってしまえば今回の映画、並行世界の物語です。
 並行世界といえば、スタートレックでは“鏡像世界”がもうひとつの世界としてTOS時代から――そちらもひとつの歴史を紡いできています。つまり、スタートレックの世界はもともと2つあるんですね。しかしそれはあくまでも並行せかいというよりも“ミラー”な世界なわけで、最初から表裏一体で存在していたんだと思うんですよ。磁石のSとN。物質と反物質、みたいな。
 
 今回のST11はそれとは別で、過去のとある時点で分岐した世界の物語です。
 正史の方の24世紀。2387年というから、最後の作品――『ネメシス』から8年後、恒星の爆発によってロミュラスが消滅。この事件によって復讐鬼となったロミュラン人・ネロと、爆発を防ごうと奔走した駐ロミュランのバルカン大使・スポックが爆発による時間移動に巻き込まれ、方や2233年、もう一方はその25年後の2258年にタイム・スリップしてしまいます。
 過去に移動したネロによって、後の“英雄”ジェームズ・T・カークの父、ジョージの乗船するU.S.S.ケルヴィンは破壊され、カークの人生――そしてその活躍に支えられてきた宇宙の歴史が変わり、時間が分岐しはじめます。25年後、父の遺志を継いで宇宙艦隊アカデミーで訓練するカークは、未来のスポックの到着と共にバルカンの破壊行動に出たネロと対峙する――というのが今回の筋書き。

 旧作ファンもおそらく納得の設定で始まる新シリーズは、なんとロミュランの母星――ロミュラスの崩壊という驚愕の展開からスタートします。これは正史に与える影響、大きいですよ。一体誰がロミュラスの消滅なんて予想外な事態を想像したでしょう?
 『ネメシス』といい、今回の映画といい、スタッフはロミュランに恨みがあるとしか思えない(われわれが地球人だからですか?)
 ロミュランって、過去はどうあれ、最近(24世紀後半)では結構、和解できる方向に向かってると思ってたんだけどな。ドミニオン戦争のときもそうだし、スポックを大使として評議会に置いてる、とかも。クリンゴンよりも話が通じそう。そんなロミュランを襲った今回の悲劇ですよ。うーん。複雑。

 作品の位置づけとしては24世紀シリーズの流れを踏まえて作られた“改変後の過去”(ST8『ファースト・コンタクト』の影響を受けている)である『ENT』と同様に、今までのシリーズを踏まえて作られた23世紀の物語。同一線上ではないけれど、確かに繋がっている。時系列で並べても“最新の未来”であることに変わらないし、よく考えたって感じ(上から目線)
 
 作品内でもタイム・パラドックスについて議論されているのも面白いですね。普通なら避けたがるところを、逃げずに取り上げる、と。そしてやはり“時間の流れ”という対流においても、宇宙史におけるカーク船長の存在は無視できないものであり、この時間軸もカークという存在に依存して現存しているらしい。カークが死んでしまえばその後の歴史が“この事件”に準拠して改変されていたかもしれないが、生き残った以上このまま別の時間軸として存在するしかない。何故なら彼は伝説の男、ジェームズ・T・カークだから。彼の前には無限の可能性というレールが敷かれ、彼が生きている限り常に新しい伝説が作られていく。
 そう考えると、神にも等しい“時間の流れ”にすら新しい時間軸の継続を認めざらさる(日本語、これで合ってるのかな)を得ない、カーク船長の偉大さを、改めて感じ入ります。

 それはそうと。スコッティが転送実験に使ったアーチャー提督のビーグル犬って、ポートスだよね?でもこの時代まで生きていたらアーチャー船長150歳近いし、どうなんだろ。ただのリップサービス(?)かな?
 

と、いうわけで。物語自体は満足なのでが、訳文には少し違和感を覚えました。なんか教科書の英語を直訳したみたいな言い回しがところどころあったり。もっと意訳してもらった方がすっきりなんですけど。訳者3人というのが原因だったかどうかは神のみぞ知るところですけど。



おまけ語り。
今まで自分はトレッキーじゃなくて『スタトレ』ファンだと思っていたけど、ノベライズの感想でここまで長く語ってると、自分でもちょっといきすぎかなとか思ったり。
これでもまだ語り足りないとかね、どんだけよ(シドの『夏恋』風に)


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はろーすみす

Author:はろーすみす
シリーズものも平気で数年寝かせる積読家。本格ミステリとスター・ウォーズ小説を中心に読み漁り、新刊・話題作はあまり追っていません。

好きなミステリ作家は古野まほろ、はやみねかおる、西尾維新、霧舎巧。
ジャンル外では築山桂と小川一水。
講談社ノベルスをこよなく愛す特ヲタ。

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