2011.07/12 [Tue]
ドラマ総評:『遺留捜査』
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★★★★☆
遺留品って知ってますか? 事件の現場に残されていた物のことです。
その物から聞こえてくる声を聞きとるのがぼくの仕事です。
警視庁・科学捜査係を舞台に遺留品から事件の真実に迫る!! 視庁捜査一課・科学捜査係を舞台に、遺留品から真実に迫っていく刑事ドラマ。主人公・糸村聡は鑑識課員たちが集める遺留品だけではなく、被害者が残した"被害品"に着目し、被害者の最後のメッセージを探っていく。「被害者はなぜ殺されなければならなかったのか?」 従来の犯人捜しドラマとは一線を画す新しい警察ドラマ! 全11話。
確かに新しい。一般的に刑事ドラマが多く放送される理由は、何らかの事件が起きるにはそこに至るまでの動機があって、被害者加害者それぞれに葛藤や言い分があるから人間ドラマのフォーマットとして物語を作りやすいからという事情があります。そういった事件に関わることになった脇役端役にもきちんとした人生を持たせ、事件よりも人間模様にスポットを当てた群像劇型の刑事ドラマが『ゴンゾウ』です。
しかし『ゴンゾウ』の場合、ひとつの事件を10話近く掛けて扱ったことで刑事ドラマとしてはだれる上に遅々として進まない捜査状況にフラストレーションが溜まる、というのが私の感想でした。対して本作ではその部分を1話1話、別の事件でやることで改善しています。
この『遺留捜査』は事件現場に遺された遺留品から被害者の声を聞きとり、伝えることがテーマです。主人公が名探偵的な推理力で事件をずばっと解決するわけでもなく、あくまでも遺留品の意味、それがそこにあった理由を明らかにすることを目的としたドラマ。大事なのは無念のうちに亡くなっていった被害者が何を想って生きていたのかです。
そのため事件自体は相当あっさりと片付いてしまいます。殺害の動機もたまたま盗みを目撃されたなどといった大したことないものばかりで30分も経とう頃には解決してしまう割り切りよう。そこに重きは置かれていないのです。
本当のクライマックスはむしろそこから――関係者へのいわゆるアフターケアの部分にあります。マッチの箱や石と事件とは無関係でありながら現場に遺されていたささいな証拠品の数々。糸村さんが事件の解決にはまったく寄与しないそれら遺留品がそこに存在していた理由を探るうちに、被害者が何を感じていたのかを理解するに至り、それを遺族に伝える。
これが毎回、非常にクオリティが高く、もれなく感動させられてしまう。1話完結のドラマで毎週のようにここまでしっかりと心に響いてくる作品はそうそうお目に掛かれません。
貫地谷しほりがありえないほど役柄に合っていないミスキャストだったり、そもそも織田くん(貫地谷の演じていたキャラ)の存在する意義があるのかという織田くん全般についての疑問もあるし、江藤さんと警察との因縁を全話を通して引っ張る必要があったのかなど細かに気になる部分はありますが、それらの問題点を踏まえても素晴らしい作品でした。
テレ朝の水9は今後、『相棒』(2クール)、『9係』(1クール)、『遺留捜査』(1クール)の持ち回りで良いとすら思えるレベル。
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