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東川篤哉『謎解きはディナーのあとで』

謎解きはディナーのあとで謎解きはディナーのあとで
東川 篤哉

小学館 2010-09-02
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★★★★☆
お許しください、お嬢様。わたくしチャンチャラおかしくて横っ腹が痛うございます
ミステリー界に新たなヒーロー誕生!? それは、国立署の新米刑事にして世界的な企業グループの総帥の娘という宝生麗子、ではなくてその家の執事影山なのだ! 本当はプロの探偵か野球選手になりたかったという影山は、謎を解明しない麗子に時に容赦ない暴言を吐きながら、事件の核心に迫っていく。「失礼ながら、お嬢様の目は節穴でございますか?」


「謎解きはディナーのあとで」第1作。
 言わずと知れた2011年本屋大賞受賞作です。これ、ね。Amazonやブクログのレビューを見るとめちゃくちゃ低評価なんですよ。とにかくボロクソに言われていて「本屋大賞終わった」「子供向けレベル」「軽い、薄い」「どこが本格なの?」「ミステリとしては物足りない。ミステリを読んだことがない初心者向け」などなど。でも、これはむしろ逆だろう。本格ミステリをある程度読み込んでいないと良さがわからない。この作品は“本格”の何たるかをよく理解していない層が読んでもまるで面白くないと思います。
 たとえば「殺しのワインはいかがでしょう」や「二股にはお気をつけください」はありがちでしょぼいトリックが用いられてますが、ぶっちゃけそんなものはどうでも良くて。犯人の特定こそが本書のミステリとしての要です。
 たかだか40ページ(解決編を除けばさらに短く30ページ)の中にこれでもかというほどもりもりヒントが詰め込まれ、謎解き場面になって初めて張られていた伏線量の多さに気付かされます。第一章からして既に感嘆の出来。おまけに室内で靴を履いていた理由の「あるある」度にテンションも上がります。読みやすさも相まってさくさく進んでいくのも短編の強みですね。

 容疑者を断定するまでの手際は鮮やかなもので、既に明らかになっている情報から犯人候補をどんどん絞り込んでいく。影山のセリフにもあるとおりこれは「理詰めで解ける問題」なのです。
 推理の過程、論理の道程を純粋に楽しむのが本格の妙でしょう。一般読者層は本格ミステリというと発想一発勝負の物理トリックのイメージが強く、そうでなければ人間ドラマ重視、飛び道具的に物語全体をひっくり返してくる叙述系を持て囃す傾向にあるようです。うーむ。
 東野圭吾や米澤穂信が支持されているし、ここらで本格が本屋大賞をとっていっきにミステリブームくるかな、と楽観的に見ていたのですが、結局は見てのとおりのぼろ貶し。一般読者との溝の深さを痛感するハメになりました。
 東川さんには悪いけれど、梓崎優みたいな有望な新人が下手に受賞しなくて本当に良かったと思う。オーソドックスなフーダニットでこれだもの。ホワイダニットとか絶対に理解を得られない。


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Comment

あしあとから来ました。 

足跡からコメントを汚します失礼をお許し下さい。
「謎解きはディナーのあとで」の正当な評価を簡潔に書かれてあることに大変共感し、いいのかなと思いつつコメントしています。
かなり読書量のあるかたでも、この本のミステリとしての価値を侮っている方があまりに多いと私も思っておりました。かといって本当・本物のミステリ好きは、ミステリが好きすぎて、温かい目で売れている作品を正当に評価できないという矛盾があります。
筋金入りのミステリ好きからも一般読者からも低評価の本がなぜこんなに売れているのか、不思議な状態ですね。
ミステリブームがくるといいですが、難しそうですね。
  • posted by 吉村ゴンゾウ 
  • URL 
  • 2011.07/14 17:02分 
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コメントありがとうございます。
日本人は流行に弱いのですぐにブームに乗ってしまいます。しかし、せっかく質の高い本格ミステリを広く手に取って貰える機会ができたのに、きちんと読み解かれずに多くの人に誤解されたままで終わってしまうのは残念でなりません。だからといって理解できる人だけが理解できれば良い、という排他的な考えもやはり違うと思うのです。

本作をあまり楽しめなかったという方々が感想を漁る中でこうして書いたレビューに当たり、「ああ、そういう読み方ができるんだ」と少しでもその楽しさに気付く切っ掛けになれれば本望なのですが……。
  • posted by はろーすみす 
  • URL 
  • 2011.07/14 23:44分 
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NoTitle 

先日は、ありがとうございました。
こちらにもトラックバックさせていただきました。
トラックバックお待ちしていますね。
  • posted by 藍色 
  • URL 
  • 2011.11/30 03:22分 
  • [Edit]
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いつもありがとうございます。
早速、返させて貰いました。
  • posted by はろーすみす 
  • URL 
  • 2011.11/30 23:33分 
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「謎解きはディナーのあとで」東川篤哉

「失礼ながら、お嬢様の目は節穴でございますか?」 令嬢刑事と毒舌執事が難事件に挑戦。ユーモアたっぷりの本格ミステリ。 執事とお嬢様刑事が、6つの事件を名推理!ミステリ界に新たなヒーロー誕生! 主人...

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Author:はろーすみす
シリーズものも平気で数年寝かせる積読家。本格ミステリとスター・ウォーズ小説を中心に読み漁り、新刊・話題作はあまり追っていません。

好きなミステリ作家は古野まほろ、はやみねかおる、西尾維新、霧舎巧。
ジャンル外では築山桂と小川一水。
講談社ノベルスをこよなく愛す特ヲタ。

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