2011.08/04 [Thu]
辻村深月『オーダーメイド殺人クラブ』
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★★★☆☆
この先の少年Aたちがやるたび、ああ、あのパターンだよねっていう基本に、この先ずっとなるような、
そういう事件じゃなきゃ、起こす方にも死んだ方にも意味ない。
誰も起こしたことがない、新しいパターンじゃなきゃ……
中学2年の4月、突然友人たちから無視されるようになった「リア充」少女のアンは、同級生のイケてない「昆虫系」男子・徳川の言葉をきっかけに仲直りする。しかし、親の無理解、友人との関係に閉塞感を抱くアンは普通の中学生とは違う「特別な存在」となるため、徳川に自分が被害者となる殺人事件を依頼する……。
初、辻村深月。私が『クビキリサイクル』を読んで西尾維新、そして講談社ノベルスにハマったのが2002年の終わり頃で、『メフィスト』本誌の座談会なんかもチェックするようになったのが矢野龍王の頃です。そんな経緯もあって辻村深月はデビュー決定時から読みたいとは思っていたのですが、初っ端からの三分冊刊行&当時はいわゆる探偵小説主体でレーベルを漁っていたこともあって結局読まず終いでした(例の“著者近影差し替え事件”をリアルタイムで体験してしまったクチです)
それがいまでは押しも押されぬ人気作家。本書『オーダーメイド殺人クラブ』では、とうとう直木賞候補にノミネートされるところまでやってきました。
私とアイツでセカイを変える、リアル系ボーイ・ミーツ・ガール(いや、ガール・ミーツ・ボーイ?)というキャッチフレーズがこの作品にはぴったりでしょう。限りなく理不尽でこれ以上なく閉塞された“セカイ”の中で、本来なら一生接点のないようなふたりがあるキッカケから話すようになり、趣味と秘密を共有する。しかしそこはスクールカーストが当然のようにまかり通る限りなくリアルな中学生社会。学校では体面を気にして絶対に話し掛けはしないし、馴れ合うこともない。
ここが恐らく好き嫌いの別れるところです。読んでいて何これ、と思うくらいにギスギスしていて息苦しい小説なんです。アンが逃避したくなるのもわかります。もうね、人間関係がありえないほどドロドロしている。しかもドロドロしているハズなのに秩序が保たれているから気持ち悪い。中学生ってこんなんだったっけ?と頭を抱えたくなるほどです。
いや、これは自分が男子だから理解できないのかもしれないのですけれど、女子って怖いな、と。ある日突然、大したこともない理由でシカトし始めたり、別れて間もない友達の元カレと付き合い始めて喧嘩したり、かと思えば次の日には嘘のように仲直りして攻撃の標的が変わっていたりして。あそこまでやられて平然と友達関係を継続できる神経も理解の範疇外だし、二度と口を利こうとなんて思わないけどなぁ。普通に絶交レベル。こっちから願い下げです。
けどまぁ、そういった状況が実際にあることは知っています。私も小学生のときに経験があって、すごく仲が良さそうに見える女子ふたりが相手のいないときにここぞとばかりに「○○むかつく」的な悪口を聞かせてくるわけです。小学生ですよ? 軽くトラウマを植え付けられましたね。
本作がアン=女子と徳川=男子の組み合わせになっているのにもそのあたりが関係している気がします。辻村深月自身、中学時代には二度と戻りたくないというだけあり、女子-女子間よりも女子-男子間の方が意外と心からの友情というものを描くのに適していると考えたのかもしれません。
べたべたした間柄ではなく本当に理解し合い、繋がっていたふたり。互いが互いを助け、心の支えになった数ヶ月間。その最初から最後までを見届けて爽快感溢れるラストまで辿り着いたとき、なんて素敵な物語だったのだろうと感じる反面、同じクラスの生徒の存在を真正面から受け止める――たったそれだけのことなのにボーイ・ミーツ・ガールとして描けてしまうその壁の大きさを、少し淋しく思うところがありました。
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NoTitle
清々しい気持ちで読み終えることが出来ました。
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