2009.05/25 [Mon]
古野まほろ『探偵小説のためのヴァリエイション 「土剋水」』
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★★★★★
超能力もルールがしっかりしとったら充分本格じゃろがなもし。西澤保彦に怒られるぞな
「水里あかね、殺人未遂容疑で緊急逮捕する」住田温泉に響く冷たい声。
嘘!! あたし人殺しなんかじゃない。それとも不思議系妄想が現実になっちゃったの!? 誰か助けて!!
競技かるたタイトル戦をめぐり発生した陰惨な3人殺し。
でも大丈夫。きっと天才美少女陰陽師(自称)のコモが超絶論理探偵術で助けてくれ……って
コモ、コモ何するの!? 死刑もコモのべろちゅうも、どっちも駄目ぇぇーーーー!!
「探偵小説」シリーズ第2作。
とりあえず、あらすじ自重ww
一般読者はまず“引く”だろうし、それによってまほろさんの本が手に取られないというのは、なんとも悲しい限り。でも、このくらい(あらすじのことね)のレベルでギブアップするようでは中身なんか到底読めるわけもなく。それがまほろクオリティ。
しかし、1冊読み終えているとこうも素直に文章が入ってくるものか、と。早くもまほろさん――というか水里あかねの文章に慣れてしまった自分がいます。おそろしす。
さて、今作「土剋水」は前作以上に「探偵小説」――とくに「小説」という媒体で“読まれる”ことを前提につくられた作品だと思います。だから、外田警部の作成したタイム・テーブルにその場にいなかったハズのコモの欄が設けられていたり(「本格は細部を容赦しない」とのこと)、引用文のようにさも事件が本格ミステリが前提であるかのような発言が見られたり。
また、解決編では推理の整理のために本の下部にコモによるメモ欄がつけられたりしています。このメモ欄の存在もただの余興(あそび)ではありません。解決編は散々の仮定設定と可能性の追求、それによる公理の導き出しが行われ、多分に数学的。そして公理1だの公理12だのと呼ばれる数々のひっくり返しようのない決定事項は、ともすれば読者が混乱してわからなくなってしまう。そこで、メモ欄。事実と現在までの推理状況の確認のためにその都度思い出すべき仮定や公理がコモによって記入されているわけですね。難しい証明作業も、決してひとりよがりにならず、脱落者を出さないための最善の工夫が為されているわけです。くふう。
ミステリとしてもきちんと整理すると「土剋水」に要約され(「土」の要素が広義で多少わかりにくいですが)、言うことなし。コモからは梨の香りだよ。
ほんと、ここまで考えて創っているまほろさん、すご過ぎます。やばいです、まほろさん。完全に虜です。あなたは本格の申し子ですか?
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