2011.06/28 [Tue]
神村友樹『歴史の闇研究会』
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★★★☆☆
歴史は勝手にできるものじゃなくて、人間が作るものなの。だから必ず闇が生まれる。
歴史の闇の研究を目的とした東都大学サークル「歴史の闇研究会」。メンバーの宮神飛鳥、長倉愛美、緒方駿は、第二次世界大戦末期に海軍省軍務局によって研究された生物兵器の文書を手掛かりに、地図上に存在しない小笠原諸島「零島」と兵器施設の発見を研究目標とする。闇に葬られた歴史の真実をめぐる冒険が始まる!
青春ミステリ、歴史ミステリという売り文句でしたがこれは普通に冒険小説だよなぁ。一応、人は殺されるし白タキシードに白シルクハットといういかにもキャラっぽい探偵は出てくるものの、こと人死にに関してロジックが冴えているわけでも伏線が張られているわけでも、ましてやトリックが炸裂するわけでもなく。謎解きの妙はないに等しいです。洋画のトレジャーハンターものにありそうな作品でした。
それなら最初から冒険小説だと割り切って書いてしまえば良かったのに、著者がミステリ小説に対して変に拘りがあるのか「名探偵 皆を集めて さてと言い」的なことを始めてしまうからタチが悪い。それをやられるとこちらとしても、どうしてもミステリ的な観点から読まざるを得ないわけで。残念ながらミステリとしては成立すらしていないというのが正直な感想です。
主人公たちが一介の大学サークルに過ぎないのに後半でムダにスケールを大きくしているのも歓迎できません。分不相応といっても良いくらいで、そのアンバランスさが読んでいてどうにもちぐはぐに映ります。
霊感と称している能力がどちらかといえば超能力っぽかったりと、そういった部分がごっちゃになっているのも設定としては甘いです。ついでにいえば霊感を持っていることにコンプレックスを抱えていた飛鳥がいくら“自分”を認めてくれる人と出逢えたからといって、いちいち「霊感によると~」と口に出すのも違和感がある。
幻冬舎ルネッサンスというと自費出版の会社のようだし、そこらへんも関係しているのかしら。
しかしそれでも★×3を付けているのは、何度も述べているように冒険小説としてはアリだからです。前に読んだクライブ・カッスラーの小説なんかはだいたいこんな感じのストーリーラインだったので、勝負するジャンルさえ違えていなければ案外受け入れられたと思う。
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