2011.06/26 [Sun]
映画『カニング・キラー/殺戮の沼』
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★★★★★
“次はアフリカ人虐殺のニュース”? みんなチャンネルを替える。
ひとりの白人女性が、アフリカの奥地で無残にも謎の生物の餌食となった。この事件を取材するため、NYのテレビ局で報道部のプロデューサーを務めるティムは、取材班を伴ってジャングルの奥深くへと足を踏み入れる。しかし、地元の人々が“グスタヴ”と呼ぶこの血に飢えたモンスターも、獲物を探してジャングルを徘徊していた。先の読めないスリルと心臓が止まるほどの恐怖――狡猾な殺人鬼による血まみれの足跡がどこまでも追いかけてくる! 彼らを待ち受けていたのは、息つく間もなくエンドレスに続く壮絶な殺戮だった。 (2007年 アメリカ)
地上波で放送があったので録画視聴。
はじめに言っておくと、これは傑作。モンスター・パニックというフィールドでアフリカはブルンジ共和国の民族紛争問題を描いた硬派で骨太な社会派映画です。ワニとの対決よりもゲリラによる民間人虐殺や、その様子をテープに収めてしまったことで執拗に付け狙われるなどサスペンス色の濃い内容になっているあたりがどうやら評価の分かれ目らしく、頭を空っぽにして巨大生物との攻防を楽しみたいという人には確かに不向きな内容といえるでしょう。『プテラノドン』や『チュパカブラ』、『グリズリー』といったおバカ系映画とは根本から違う、本気で真面目な映画なのです。
劇中のアフリカ人虐殺のニュースになんか誰も興味を持たない、という言葉が恐らく製作意図の根幹であり、紛争地域の惨状をいかにして伝えるかを考えた末に辿り着いたのがこの形だったのだと思います。モンスター映画というフィールドに乗っかって、普段はそんな話題に見向きもしない層にもちょっとでも興味を持って貰えるように。どんなに非道い事態が起こっているのか1mmでも良いから知ってほしい。そんな真摯な姿勢の下に作られています。
無慈悲に殺され、打ち捨てられた人々の死体を食べるうちに肥大化し、進んで人を襲うようになっていった巨大人喰いワニ“グスタヴ”はいわば内紛の象徴。ゲリラ組織のリーダーが“リトル・グスタヴ”と呼ばれているのも暗喩的です。
ゲリラに襲撃されているシーンでも常にモンスター映画としての緊張感が付きまとい、その緊張感が二乗にも三乗にも増すところは恐怖心の煽り方としても非常に功を奏している部分でした。
さらに本作はワニ映画としてのディテールにも拘り抜かれてことからもその本気度が窺えます。CGは大作級に良く出来ているし、なんといっても感心したのは主人公たちが乗り込んだバンにグスタヴが後ろから襲い掛かる場面です。ここでグスタヴはトランクを巨大な顎で破壊して後部座席に顔を突っ込むと、車内に咬みつき、身体を一回転させてさせるのです。これはワニが獲物を仕留める際に見せる行動のひとつで、回転することによって動物の肉を引きちぎるデスロールと呼ばれるアクション。ここまで徹底的にワニの生態を再現している。そして大迫力。いや、本当に凄いです。
モンスター・パニックとしても最高レベルの代物だし、メッセージ性も高い。アフリカの熱気を伝えるかのような全体にオレンジ掛かった映像も素晴らしい。おまけに主役はわれわれ日本人にもお馴染みのドミニク・パーセル(そう、『プリズン・ブレイク』のリンカーン・バローズです!) これを観ずして何を観る?
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