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映画『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』

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俺はそういう連中に迫害されてきた
国際情勢が緊迫する1960年代。裕福な家に生まれ、名門大学に通うチャールズと、母親と引き裂かれた悲しい過去を持つエリック。チャールズは強力なテレパシーを使うことのできるミュータントだったが、自分と同じような能力を持つ者の存在に気付きはじめていた。そんな中、強力な磁力を発生させ、あらゆる金属を自在に操れるエリックとめぐり合う。ミュータントとして人類と闘うべきか共存すべきか、異なる信念を抱きながらも友情を深めたふたりは、世界各地のミュータントを仲間に迎え入れていく。しかし、戦時中にエリックの母親を殺した元ナチスの科学者ショウが、ミュータント集団“ヘルファイヤークラブ”を結成。やがてショウが悪魔のごとき計画を実行に移したとき、チャールズとエリックはその野望の阻止に挑むのだが……。
(2011年 アメリカ)


「X-MEN」シリーズ 第5作。
 公開中の『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』を観てきました。基本的にアメコミ映画はさほど好きではないのですけど「X-MEN」は特別で、この映画は本当に心待ちにしていました。
 10年目にして通算5作目となる今作は前作『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』よりもさらに時代を遡り、X-MEN創設のお話。主役はなんと若き日のプロフェッサーXとマグニートー。最初のトリロジーでもかつては友人であったといった描写がありましたが、今回はそんなふたりの出逢いから決別までを描いた物語になっています。
 そんなおじいさんたちの予定調和な過去話をいまさら語られても……と言う人もいるかと思います。私も一報目は面白くなるのか?と不安でした。が、蓋を開けてみればこれはすごい。プロフェッサーXことチャールズ・エグゼビアと後のマグニートー=エリック・レーンシャーの友情と決断を見事に描き切り、過去4作へと繋げる素晴らしい出来。従来までの甘さが目立つ「X-MEN」はもうありません。文句なしのシリーズ最高傑作です。

 これまではプロフェッサーXとマグニートーが過去に友人だったという設定はあくまでも背景的なものであり、実際にはどの程度の仲だったのかがいまいち伝わり難いところがありました。しかし本作ではまさにその部分を掘り下げ、魅せてくれるのです。ユダヤ人として迫害され、超能力の開花のために母親を殺された過去。信頼できる者など誰もおらず、ただただ復讐のためだけに生きてきたエリックが初めて得た友人がチャールズでした。
 自分と同様に異質な能力を持ち、自分の中の楽しかった想い出に触れたときに共に涙してくれる存在。チャールズは良きパートナーであると同時に、強くありながら常に孤独であったエリックを救ってくれた恩人でもある。ふたりの心底息の合ったリクルートミッションの様子や能力強化の特訓を観てから改めてトリロジーに触れると、ずっと深みが出てきます。『X-MEN:ファイナル・ディシジョン』でプロフェッサーXの死に対して軽口を利かれたときにマグニートーは「チャールズは偉大な貢献者だった」と声を荒げますが、それも納得。このふたりは本当に互いを信頼し、真に理解もしていた。

 終盤でチャールズが流れ弾に当たったときもエリックは真っ先に駆け寄り、心配します。袂を分かち、歩む道も別々になり、将来的には己が障害になることは容易に想像できても、それでもチャールズを見捨てようとは考えないし、死んでほしくもない。殺そうと思えば簡単なのにそうはしない。
 チャールズの方も同じで、エリックが人間と敵対すると分かっていながらそれに付いていきたがっているレイブンを止めずに「お前の信じる道を行け」というわけです。理想は相容れなくともエリックは親友で大切なレイブンを託すのに足る相手であるという表れです。それなのに結局エリックの行動はショウのそれとさほど違わないから一層悲劇が際立つ。
 安直な裏切り裏切られの関係に貶めることなく、絶対的に信頼しているにも関わらず結果的に敵味方になってしまっているという図式は、既にある作品観を大きく変えてみせたと思います。

 ミスティークの担う役割も意外と大きい。チャールズ大好きの超ブラコン(鉄板の義理の妹設定!)のレイブンはやがて同じミュータントであるハンクと惹かれ合うも、ミュータントの異質な外見に劣等感を感じる彼とどうしても埋められない溝を感じてしまう。そしてありのままの自分を受け入れてくれたエリックの元へ。
 青い肌にウロコ模様という「X-MEN」の登場キャラの中でも特にミュータントちっくな外見を持つ彼女の苦悩こそ、ミュータント全体が抱えている人間との軋轢を象徴したキャラクターだったという事実。集められたミュータントが大学生的なノリで銅像を破壊しても何の罪悪感を覚えていないところで人間とミュータントの共存の難しさを端的に観客に示し、レイブンのような素直で良い娘すら対人間の考えを受け入れざるを得ない状況まで追い込んでしまったことに問題の深刻さ、複雑さが見てとれる。

 他にもハンク=ビーストの来歴が明かされたことで3作目に登場する治癒薬キュアがいかに彼の念願であったのかが窺い知れたり、前作を踏んでプロフェッサーXよりも長生きしていることがわかったウルヴァリンがちらりと登場してみたり、セレブロのプロトタイプが出てきたり、チャールズの禿ネタが2回もあったり(パトリック・スチュワートはもはや怒って良いレベル)、史実に絡めつつも後に別の未来へ進む布石をきちんと打っておいたり、プロフェッサーXが車イスだった理由が明かされたりと、ドラマ面でも見応えがある上にこれまでの作品で欠点のひとつであった説明不足を逆に利用して過去作を徹底的に補填しているのがすごいですよね。これがあるのとないのとではシリーズの評価が全然違ってくるハズ。

 『X-MEN:ファイナル ディシジョン』との矛盾点は私はさほど気にしていません。あれは本編の20年前の話なので少なく見積もっても今作より20年以上は後の話だろうし、今回描かれたようにマグニートーとプロフェッサーXは完全に仲違いをしたというのとはニュアンスが違う。ジーンにとってチャールズの下で暮らすのが一番良いと思えば、エリックは迷わずチャールズの学園に入れることを支持するでしょう。エリックの最終目的はミュータントの幸福なのですから。足の件も今回で完全に車イス生活になったのではなく徐々に弱っていった、或いはプロフェッサーXと行動を共にするにあたってマグニートー配下の治癒能力系ミュータントが一時的に治した、とかいくらでも整合性のつけようはあります。
 むしろ、これから始まる予定の新三部作の最後でそこまで持って行ってくれたらもう何も言うことなしなのですが、果たして。
 でも次は『ウルヴァリン』の続編ですよね? てっきり本作よりもそちらが先なのかと……。


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はろーすみす

Author:はろーすみす
シリーズものも平気で数年寝かせる積読家。本格ミステリとスター・ウォーズ小説を中心に読み漁り、新刊・話題作はあまり追っていません。

好きなミステリ作家は古野まほろ、はやみねかおる、西尾維新、霧舎巧。
ジャンル外では築山桂と小川一水。
講談社ノベルスをこよなく愛す特ヲタ。

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