2011.06/17 [Fri]
映画『カサンドラ・クロス』
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★★★★☆
ドクター、君は私を人間として見ていない
ジュネーブにあるI・H・0(国際保健機構)に3人のスウェーデンの過激派ゲリラが乗り込み、アメリカの秘密生物研究セクションを爆破しようとした。しかしガードマンと射撃戦になり一人は射殺、残る二人は様々な細菌類が研究開発されている“危険な"部屋に逃げこむが、そのうち一方が射たれて倒れた拍子に薬のビンを割ってしまう。無傷の男が一人逃走した後、残されたゲリラを診察したスイス人女医エレナは、割れたビンにアメリカが秘密裡に研究していた伝染性の細菌が入っていたことをつきとめる。緊急事態の発生で、アメリカ陸軍情報部のマッケンジー大佐が乗り出し、やがて感染してゲリラがストックホルム=ジュネーブ間の大陸縦断列車に乗ったことが判明。乗客リストの中に著名な医師チェンバレンの名があるのを見つけたマッケンジーは、無線電話で彼を呼び出し、事件の概略を説明するとともに車内に潜んでいるゲリラを捜させた。そして、千人の乗客を検疫収容させるために、ポイントを切り換え、列車をポーランドのヤノフへ向かわせる。そこには30年近くも使用されていない“カサンドラ・クロス"と呼ばれる鉄橋がかかっていた……。 (1976年 イタリア・イギリス)
地上波で放送があったので録画視聴。
ウイルス・パニックものは映画の中でも特に好きなジャンルなので期待を寄せていたら、これは良い意味で予想外の異色作。ウイルス問題はあくまでも導入設定であって早々に解決し、ウイルス漏洩の証拠隠滅を目論む軍上層部によるカサンドラ・クロス崩落“事故”をいかにして防ぐのかが後半の焦点になってきます。
危険なウイルスが列車内に蔓延したことを知って派遣された救護チームが防護服に完全武装で乗り込んでくるところは、威圧感抜群で下手なパニック描写よりも全然怖ろしい。車外に出ようとする人間には射殺すら許可されており、列車は完全に救護チーム=軍の管理下に置かれます。本来なら万全の体制に安心すべき状況なのになぜか不穏に感じてしまう。
ところが、後半になって状況は一変。殆ど自然回復のようなカタチでウイルスが死滅したにも関わらず、軍はなおも方針を変えず、列車をカサンドラ・クロスへ向かうルートを走らせ続けます。このまま進めば待っているのは確実に死。そのことを知ったチェンバレンらはなんとか列車を停止させようと車両を制圧している救護チームからの指揮権奪回を求めて闘う――というサスペンスへと物語は移行していくのです。
ここらへんはキャラも立っているのでかなり楽しめました。特に不倫妻・ニコールの愛人に対する器の大きさが素敵すぎる。各人の心情部分にもきちんとスポットが当てられているなど、登場人物を単なる“駒”として扱っていない演出もポイント高し。
クライマックスシーンにおける昨今のように派手派手しくはない、ミニチュアを用いたカサンドラ・クロスの崩壊は外から眺めるとあっさりとしていますが、乗客の様子はリアルもリアル。それがいかに非道な処置であったのかをまざまざと見せつけられました。
しかし何といってもラストの数分です。フィニッシング・ストロークさながらに描かれるある人物の苦悩、そしてラストのセリフが本作を硬派なサスペンス映画に押し上げています。思えばオープニングの冬ソナっぽい音楽の時点で確かにひと味違う空気を醸し出していたもんなぁ。
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