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城平京『虚構推理 鋼人七瀬』

虚構推理 鋼人七瀬 (講談社ノベルス)虚構推理 鋼人七瀬 (講談社ノベルス)
城平 京

講談社 2011-05-10
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★★★★★
人の想像力によってその身が不死となるのなら、その想像力を攻略するのみ
深夜、悲運のアイドルの亡霊は鉄骨を片手に街を徘徊する。その都市伝説の名は――鋼人七瀬。「そんなの推理じゃなくて、欺瞞じゃない!?」 真実を求めるよりも過酷な、虚構の構築。自身もまた怪異的な存在である岩永琴子の推理と知略は本物の怪異が起こす事件を止めることができるのか。


 大勢の人間の“いてほしい”という願望が現実になった怪物・鋼人七瀬を消すための唯一の手段は「鋼人七瀬なんていない。作り話だ」と都市伝説を信じる人々に思わせること。すなわち虚構の構築をもって怪異に合理的な答えを与え、怪異そのものを“嘘”にする。
 そのため“事件の解決”は最も鋼人七瀬の情報が集まるインターネットの鋼人七瀬まとめサイトへの投稿というカタチで行われます。サイト訪問者=鋼人七瀬支持者の多くが琴子の書き込んだ“答え”を真実だと思えば勝ち。存在の拠りどころを失った鋼人七瀬は消滅するといった仕組みです。

 この作品で行われているのは尤もらしい真相をまさしく捏造していく作業です。一見するとその行為は、謎を解き明かすための推理とはまるで真逆のように思えますが、実はどちらも与えられたデータから論理的な道筋の下に「結果」に着地させるという点ではまったく同じなのです。故に、これも立派な本格ミステリといえるでしょう。
 何も真相を追求することだけがミステリの楽しさではありません。この状況であればこんな推理も成り立つのでは、と論理を捏ね繰り回すのもミステリの醍醐味。本作では辻妻合わせの愉しさと推理することそれ自体の面白さを存分に堪能できます。

 鋼人七瀬という超常の存在が無作為に犯した殺人を現実レベルの犯罪にまで引き下げる。もし仮にそれが人間の犯人がいる事件であるのなら果たしてその犯人像とは? 動機は? 不可解な殺害状況にはどうやって説明を付ける? ここで試みられているのはそんな、純粋な論理ゲームです。
 怪異である鋼人七瀬がやったことが200%明らかな事実である中、到底不可能に思えるこの事件の“合理的な解決”を用意した4パターンの答えで完璧に攻略してしまう手腕には脱帽です。特に、多重解決もの最大の弊害である個々の推理における説得力の低下という爆弾すらも上手く処理してみせた上で形勢をいっきに逆転させ、そのままの勢いで完全勝利までなだれ込む解決第四の提示は圧巻。
 そのあまりにも衝撃的な内容に冗談抜きで鳥肌が立ちました。一ネットユーザーとしてその場に参加していたら間違いなく一生の記憶に残っただろうし、これは既に根付いていた都市伝説も余裕で書き換えられる域。鋼人七瀬出現を画策した黒幕がその後にとるであろう行動すらもこの解決第四を補強してしまう。本当に、これ以上の答えは考えられない。
 一風変わったタイプのミステリですがオススメです。


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はろーすみす

Author:はろーすみす
シリーズものも平気で数年寝かせる積読家。本格ミステリとスター・ウォーズ小説を中心に読み漁り、新刊・話題作はあまり追っていません。

好きなミステリ作家は古野まほろ、はやみねかおる、西尾維新、霧舎巧。
ジャンル外では築山桂と小川一水。
講談社ノベルスをこよなく愛す特ヲタ。

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1.トリプルプレイ助悪郎(2007年刊)   2.名探偵に薔薇を(1998年刊)             3.化物語(2006年刊)          4.時砂の王(2007年刊)                  5.天帝の愛でたまう孤島(2007年)

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